ビットワレットのCIO(最高情報責任者)である伊藤 浩二・執行役員・システム本部長・業務本部長

 セブン-イレブン・ジャパンやイオンといった流通業や関東の私鉄を中心としたPASMOなど、2007年は電子決済サービスへの参入が相次いでいる。そのなかで、「Edy」を運営するビットワレット(東京・品川区)は、2001年11月から電子決済事業に取り組んでいる。

 同社でCIO(最高情報責任者)として情報システム部門を率いるのが、執行役員システム本部長の伊藤浩二氏だ。伊藤本部長の社員番号は、1番。ビットワレット設立前からEdy事業に携わってきた。

 Edyの発行枚数は約3200万枚(2007年8月現在)で、ドラッグストアやスーパーなど様々な業種の店舗約5万9000店(同)で利用できる。8月末にコンビニエンスストア「ローソン」への全店導入が完了するため、利用可能な店舗数は6万7000店に広がる見込みだ。

 だが、同社を取り巻く競争環境は厳しい。セブンやイオンのほかにも、NTTドコモの「iD」やJR東日本の「Suica」などライバルは多いからだ。「競合は我々と比べて資本力がある。加盟店での実装を早く容易にするなど、知恵を絞ったシステム作りがカギを握る」と話す。そこで、2008年4月をメドに基幹システムを刷新する予定である。「開業以来、毎年2.5倍で規模が拡大している。システムが追いついていない状態だった」(伊藤本部長)と明かす。新システムは、事業計画(2007年度末に10万店)の10倍となる100万店体制でも対応できるようになる。

 現行のシステムで大きな課題なのが、運用費である。「類似した事業がないために、なかなかパッケージソフトが使えない。このため、独自の開発になるのだが、開発言語がバラバラであったことが運用費を押し上げていた一因」だと伊藤本部長は考えている。今回のシステム刷新によって、運用コスト半減を目指している。開発言語をJavaに統一したり、サーバーの台数を減らすことで目標を達成できると見込んでいる。基幹システム刷新を含めた3年間の中期経営計画におけるIT(情報技術)投資額は数十億円という。

 Edyは、システム上で成り立つ事業であるだけに障害対応には迅速な決断が求められる。伊藤本部長は小さなバックを常に持ち歩いている。レーザーポインターといった会議で使う道具のほかに、システム全体図などシステム関連の書類を持ち歩く。「担当者から障害が発生したと連絡があっても、どれほど影響があるのか分かりづらい。全体図を持っていれば状況をつかみやすく、意思決定できる」からだ。さらに半年以内にバックアップセンターを稼働させて、障害対策の強化を図る。システムを身軽にかつ堅牢にさせることで、他社が展開する電子決済サービスとの加盟店獲得競争に打ち勝ちたい考えだ。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・まず、現場で発生している事実をありのままに伝える。それから、私の主張や思いを話すように心がけている。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
 ITベンダーやシステム部門には、肉食動物のように立ち向かってくることを求める。だが、何年もお付き合いしているのに、いまだに奥歯に物が挟まった物言いが多い。特に金融機関や官公庁向けのシステム開発者ほど、失言をしないように慎重に話している気がする。億単位なのか百万円レベルなのか、ざっくりとした見積もりが欲しくても調査が必要といった具合だ。こうした姿勢だと我々が間違えた判断をしても、反対してもらえないリスクがある。

 我々のシステム部門にも「たとえ見当はずれな意見であっても減点しないが、何も言わない者は減点する」と話している。物言わぬ者も思いがないわけではなく、仲間との食事の際には文句を言っていることが多い。だったら考えのギャップを埋めたいので、話に来るように言っている。

 ITベンダーに対して感じることだが、提示された価格が高いように感じる。提案を持ってくるだけでも、部長以下たくさんの人がやって来る。こうした費用がコストとして跳ね返っているのではないかと感じる。「営業担当者を減らしたので、コストが下がりました」といえるベンダーがあってもいいのではないかと感じている。構造的な改革を望む。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞
・読売新聞
・日経コンピュータ
・日経NETWORK
・日経SYSTEMS
・カード・ウェーブ
・月刊消費者信用
・趣味の自転車関係や自動車関係

◆最近読んだ本
・『セキュリティはなぜやぶられたのか』(ブルース・シュナイアー 著、井口耕二 訳、日経BP社)
・『インテリジェンス、武器なき戦争』(手嶋龍一、佐藤優 共著、幻冬舎)
・『世界の中の日本人ジョーク集』(早坂隆 著、中央公論新社)
・『グーグル革命の衝撃』(NHK取材班 著、日本放送出版協会)
・『さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学』(山田真哉 著、光文社)
・『ウェブ仮想社会「セカンドライフ」ネットビジネスの新大陸』(浅枝大志 著、アスキー)
・『グーグル-Google既存のビジネスを破壊する』(佐々木俊尚 著、文藝春秋)
・『となりのクレーマー 「苦情を言う人」との交渉術』(関根眞一 著、中央公論新社)
※日経新聞の書評欄をみて、ジャンル関係なく興味を持った本を買っている。

◆情報収集のために参加している勉強会やセミナー・学会など
・基本的にはベンダーや業界主催のものが中心
・システム関連やセキュリティー関連など

◆ストレス解消法
・昔は子供と遊ぶことだったが、最近できていない。