今回は「Webブランド調査2007-I」の結果を基に、「ヤマト運輸」のWebサイトについて競合すると思われる、「ゆうびんホームページ」(日本郵政公社)、「佐川急便」、「日本通運」の3サイトを比較してみよう。
「Webブランド調査」(http://consult.nikkeibp.co.jp/consult/wb/)は企業が運営する800サイトを四半期ごとに定点評価する大規模アンケート調査で、他社サイトと比較しながら企業サイトのブランド力を総合的に診断・検証することができる。
調査結果をもとに、「ヤマト運輸」について、総合指数であるサイトブランド指数、同指数を構成する5つの指標、ロイヤルティやイメージに関する個別評価、自由意見などについて競合サイトとの比較、分析する。
「Webブランド調査2007-I」(2006年11月実査)の結果、「ヤマト運輸」のサイトブランド指数は81.6で、調査対象の800サイト中、総合ランキング13位となった(表1)。「ゆうびんホームページ」は総合23位(サイトブランド指数74.7)、以下「佐川急便」(総合49位、同67.5)、「日本通運」(総合191位、同54.3)の順となった。「Yahoo! Japan」「楽天市場」といったネット専業サイトを除けば、「ヤマト運輸」はトップの「KIRIN」(総合12位、同81.8)に僅差で極めてWebのブランド力が高いサイトと見ることができる。サイトブランド指数は、調査対象の800サイトの評価結果を偏差値化したものである。
表1●「Webブランド調査 2007-I」総合ランキング | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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次に、サイトブランド指数を構成する5つの個別指標について「ヤマト運輸」と競合3サイトを比較してみよう。サイトブランド指数は「コンテンツ認知度」「アクセス度」「評価」「ロイヤルティ」「評価」「ユーザビリティ」の5つの個別指標(偏差値)を基に算出されている。4つのサイトの評価結果をレーダーチャートにまとめた(図1)。「コンテンツ認知度」はサイトのコンテンツに対する認知度を、「アクセス度」はサイトへのアクセス頻度を測る指標である。「評価」では、サイトの情報やコンテンツに対する信頼度、好感度などを調べている。「ロイヤルティ」はサイトをどのように利用したか、行動を起こしたことがあるかを示す指標であり、「ユーザビリティ」は必要な情報がすぐに得られるか、分かりやすいか、操作しやすいかなど、使いやすさの度合いを示す指標である。
図1 |
コンバージョン誘引力が強い「ヤマト運輸」サイト
「ヤマト運輸」はサイトブランド指数を構成する5つの個別指標の値がいずれも高い。図を見ると、他の3サイトに比べて、「ロイヤルティ」と「ユーザビリティ」が高いことが分かる。「ゆうびんホームページ」は「コンテンツ認知度」「アクセス度」でわずかに「ヤマト運輸」を上回るものの、「ユーザビリティ」「ロイヤルティ」で水を開けられている。特に「ユーザビリティ」では20ポイント以上の差がついており、これが「ヤマト運輸」の強み、「ゆうびんホームページ」の弱みになっている。つまり「ヤマト運輸」のWebサイトは使い勝手がよく、そのためによく使われている。その結果「ゆうびんホームページ」などよりも、ブランドのアピールに役立っていると見ることができる。
「Webブランド調査 2007-I」では各サイトとも数十件から100件超の自由意見が寄せられている。これらの自由意見を分類した結果を表2にまとめた。各サイトに共通して最も多いのは「見やすさ、使いやすさ」に関する自由意見である。この「見やすさ、使いやすさ」の自由意見をプラス評価とマイナス評価に分けて見ても、上記の評価が裏付けられる。「ヤマト運輸」「佐川急便」は「見やすさ、使いやすさ」についての自由意見でプラス評価の意見がマイナス評価の意見よりも多く、「ゆうびんホームページ」「日本通運」はその逆だった。「ゆうびんホームページ」の場合は「見やすさ、使いやすさ」に関する自由意見のうち、マイナス評価のものが8割を占めており、前述した「ユーザビリティ」評価の不振を裏付けるものとなっている。「文字サイズが小さい」「ごちゃごちゃした感じがする」「情報が多すぎる」といった意見が多かった。
表2●4サイトに対する自由意見の内容 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「ヤマト運輸」と「ゆうびんホームページ」の「ロイヤルティ」について、もう少し詳しく比較してみよう。「ロイヤルティ」の評価項目は全部で15項目あるが、例として5項目の結果を図2にまとめた。
図2 |
どちらのサイトでも「商品やサービス情報を閲覧」したという回答は多い。しかし、「ヤマト運輸」では「サイトを通じて問い合わせをした」「店舗や電話、手紙などで問い合わせた」など、Webを使って実際の行動を行ったことを示す項目が目立つ。表の項目以外でも、「メルマガなどの会員に登録」「サイトでカスタマーサポートを受けた」といった項目で評価が高かった。つまりWebサイトを通じてコンバージョンを引き起こしているのである。
「ゆうびんホームページ」では、Webサイトで「疑問点や不明点が解決した」および「ブックマークに登録」についての評価は高い。しかし実際のアクションに関連する項目での評価は低く、Web上での行動に結びつくことは少ないようだ。
ビジネスパーソンでは「ゆうびんホームページ」に「佐川急便」が肉迫
男女に分けて属性別にサイトブランド指数とランキングを算出すると、サイトごとの特徴が浮かび上がってくる(表3)。「ヤマト運輸」では男女による指数の差が小さいのに対して、「ゆうびんホームページ」では男性(指数68.9)と女性(指数79.4)の間に約10ポイントの開きがある。「ゆうびんホームページ」は女性の評価が高いことが特徴となる。
女性の回答について比較すると、「ヤマト運輸」の「コンテンツ認知度」は77.2であり、「ゆうびんホームページ」では82.8となった。「ゆうびんホームページ」は「ヤマト運輸」を数ポイント上回っている。同様に「アクセス度」についても、「ヤマト運輸」の81.3に対して「ゆうびんホームページ」は85.4だった。女性に対する認知度、アクセス度という点では「ヤマト運輸」よりも「ゆうびんホームページ」の方に軍配があがった。
表3●「Webブランド調査 2007-I」による「ヤマト運輸」と競合3サイトの順位、サイトブランド指数 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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「評価」については、この指標を構成する「信頼度」「好感度」「イメージ合致度」の3項目を比較した(図3)。その結果、好感度の「ヤマト運輸」、信頼度の「ゆうびんホームページ」という色分けとなっていることが分かる。また、「佐川急便」のチャートの形状は「ヤマト運輸」と似ているが、「ロイヤルティ」「評価」の指標で大きな差を付けられている。「日本通運」は他の4指標に比べて「ユーザビリティ」が低い。
図3 |
ビジネスパーソン(有職者)を切り出してみると、「ヤマト運輸」が高い評価を保つのに対し、「佐川急便」が「ゆうびんホームページ」に迫る指数をはじき出す。Webサイトだけではなく、実際のオフィスでのアピールの程度が、Web上でのブランド認知にも影響しているのかもしれない。
なお、最新のWebブランド調査2007-IIIでは、ヤマト運輸サイトのWebブランド指数は10位にランクアップしている。