BusinessWeekに「トップ・ブロガーはどのように大金を手にしているのか」という記事があった。これまでも著名なブログは数多くあったが,今,それをビジネスに結びつけて,富を手にしている人たちが現れてきた。自身のブログに掲載する広告による収入に加え,Googleのネット広告配信プログラム,Amazonのアフィリエイト・プログラムなどを導入し,月に3000万円を稼ぐ人もいるという。

 こういう人たちの中には,すでにブログをなりわいとして生活している人も多い。これだけ稼げるのは米国特有の現象なのだろうか。米国ではもはや個人あるいは少人数グループによるブログ・ビジネスが開花し,その恩恵を受けている人が増えているようである。

人気ブログのトップは「Boing Boing」

 ブログ検索ポータル「Technorati.com」の人気ブログ・ランキングで常にトップの座に座るのは「Boing Boing」(写真1)。Forbesの「ベスト・オブ・ウェブ賞」やブログの賞である「Bloggies」も受賞した著名なブログである。同サイトのこの6月におけるページビューは2200万,ユニークビジター数は260万人に及ぶという。サイト代表者のMark Frauenfelder氏を含め4人が日々,カルチャーやテクノロジーなどに関する記事をアップしている。その1日におけるエントリー数は20~40本。サイトの主な収入源は広告で,圧倒的な読者数を背景に,その年間売り上げは優に100万ドルを超えるという。

 Boing Boingと同じく,常にTechnorati.comの上位に来るのは「TechCrunch」(写真2)。こちらは,インターネット関連の最新サービスや新興企業などを紹介するブログである。「CrunchBoard」と呼ぶソフトウエア/Web開発者向けの求人案内ページを設けており,それによる収入とサイト全体にわたる広告の収入で,1カ月20万ドルを稼ぐという。英国版,フランス版,そして日本語版サイトも開設しており,これらを合わせた月間ページビューは5億になるという。

写真1●Technorati.comで人気ナンバー・ワンの「Boing Boing」   写真2●「TechCrunch」ル
写真1●Technorati.comで人気ナンバー・ワンの「Boing Boing」
年間約1億2000万円を稼ぎ出す。
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  写真2●「TechCrunch」
7月26日のTechnorati.com人気ランキングで3位。日本語版サイトも展開している。
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副業で月970万円を稼ぐ

 ソフトウエア開発者のMorgan Friedman氏と5人のパートタイム編集者で運営しているのは「Overheard in New York」(写真3)。2006年のBloggies賞で「最もユーモラスなブログ賞」を受賞した。その名称の通り,「ニューヨークで小耳に挟んだ話題」を紹介するブログだが,「Overheard in the Office」や「Overheard at the Beach」といった合計4つの姉妹サイトを持っており幅広く展開している。1カ月のページビューは600万。売り上げは同8100ドル(約970万円)と上記2つのブログに比べれば規模は小さいが,Friedman氏はブログが本業でないうえ,少数精鋭でサイトを運用している。副業でこれだけの収益があれば十分という。

写真3●「Overheard in New York」   写真3●「Overheard in New York」
ユーザー数の規模は比較的小さいが少ないチーム編成で5つのブログ・サイトを運営している。副業でありながら2006年に同名の書籍を出すなどして注目を集めている(Overheard in New York設立者/編集者紹介ページ)。
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 こういうブログ・サイトを見ていて筆者が感じるのは「統合・ブランド化」の傾向である。ひとたびブログが注目されると,運営者の好奇心やユーザーの要望が膨らんでくるのか,それをさらに発展させるべく姉妹サイトが登場してくる。それらを同じブランドで統一し,知名度とユーザー層を拡大していくという流れがあるようだ。

収益がダントツの「Gothamist」

 例えば「Gothamist」である。ニューヨーク市内の話題を掲載するブログだが,同社はこれ以外に,13のサイトを展開している。合計4カ国13都市のブログを持っているのだ。それぞれの名称の末尾には必ず「ist」が付く。例えばシカゴ版のサイトは「chicagoist」,ロサンゼルス版は「laist」,ロンドン版は「londonist」といった具合である。こうしたブログのポータル的存在となっているのがGothamistで,同サイトはローカル・ブログのネットワークを展開しているのだ。ちなみに「Gotham」とはニューヨークのニックネームである。

 さらにこのGothamistが興味深いのはその広告戦略である。著名なブログ・サイトでも通常は広告販売を外部の企業に委託するのが一般的である。Federated Media Publishingといったネットサービス広告に強い広告代理店やBlogadsといったブログ・サイトの広告に特化した広告代理店が存在することにも驚かされるのだが,Gothamistの場合は「Gothamist LLC」という運営会社自らが広告販売を行っているのだ。

 そのため,読者統計といった媒体資料もサイトに掲載し,広告主に積極的にアピールするなど本格的。Gothamistのそれぞれのグループ・サイトが個々の地域に特化したコンテンツを提供していることから,広告主はターゲット広告が容易に展開できる。これがほかのブログにはない特徴なのだと同社は説明している。Gothamistサイト単体の月間売上高は5万~6万ドルだが,このネットワーク全体の売上高は同25万ドルになる。前述の人気ナンバーワン・ブログであるBoing Boingを上回っているから驚きだ。