NTT東日本とNTT西日本が提供している「名称が似て仕様が異なるサービス」に,多くのユーザー企業が困惑している実態の一端が明らかになった。意図した契約が行えなかったのだ。一般窓口でサービスを申し込む際は特に注意が必要。サービス名称を正確に伝えるだけでなく,用途も明確に伝えることが混乱回避の鉄則だ。
東京に本社を構える建設会社のA社は,NTT東西地域会社のサービス仕様の違いに混乱したユーザーの1社だ。同社は主に「フレッツ・ADSL」を足回りに使い,NTT東西のIP-VPNサービス「フレッツ・オフィスワイド」で拠点間を結んでいる。
西日本地域のある拠点でADSLのスループットが十分ではなかったため,例外的に光ファイバを引くことにした。ところが,回線の敷設工事が終わってフレッツ・オフィスワイドに接続を試みたがつながらない。契約したアクセス回線が「フレッツ・光プレミアム」だったからだ。光プレミアムはA社が契約した2005年11月当時,フレッツ・オフィスワイドのアクセス回線に利用できなかったのだ。
一般窓口での申し込みが混乱の一因
フレッツ回線を契約する際に,A社は各拠点にいる一般社員が個別にNTT東西の一般窓口を通じて回線を申し込むことにしていた。拠点がフレッツ回線を利用するのは工事期間の間だけであり,そうした拠点は数百にも上る。このため,ネットワーク管理者が全社の需要を取りまとめ,NTT東西の営業担当に一括で申し込むという運用形態がなじまないからだ。結果的にこの運用体制も混乱の一因となった。
A社の管理者は,拠点の担当者にフレッツ・オフィスワイドの足回りに利用できるBフレッツを申し込んでもらったつもりだった。一方,NTT西日本の一般窓口は光ファイバの申し込みがあると原則的にフレッツ・光プレミアムを推奨する方針を採っている。光プレミアムは月額料金がBフレッツと同額ながら,性能や使い勝手を高めているためだ。ルーター機能やファイアウォール機能を内蔵するCTU(加入者網終端装置)を標準で提供するなど,Bフレッツには見られない独自の付加機能も備えている(表1)。
表1●Bフレッツとフレッツ・光プレミアムの違い | ||||||||||||||||||||||||
|
NTT西日本によると,企業向けのVPNサービスなどにフレッツ回線を使いたいという申し出があれば,利用する際の注意点を説明するという体制で運用しているという。ただし,A社のように一般社員が申し込むとなると,正確に用途を説明できるとは限らない。A社の管理者でさえ,「フレッツ・光プレミアムという名称は初耳だった。当初はBフレッツと同じサービスだろうと思い込んでいた」からだ。
問い合わせの際は用途まで明確に
その後,フレッツ・光プレミアムは2006年10月にフレッツ・オフィスワイドのアクセス回線として利用できるようになった。これを受けてA社は,光プレミアムをフレッツ・オフィスワイドに利用した際の既存ネットワークに対する影響の有無をNTT西日本の一般窓口に問い合わせた。
しかし,細かな情報が得られなかった上に,回答を得るまでに1カ月ほどかかってしまったという。「専門的な質問の場合は一般窓口で即応しにくい。専門の部隊に確認を取るため時間がかかりやすい」(NTT西日本)。
フレッツ・光プレミアムはフレッツ・オフィスワイドの一部品目とはまだつながらない。サービス申し込みの際は,目的や要望も明確に伝えることが混乱回避の近道となるようだ。