今の子どもたちは、物心ついたころからケータイが身近にあり、メールやウェブ文化の中で育ってきた。けれどもメールやウェブにどっぷり浸かって来た世代だからこそ、このツールを客観視できず、溺れてしまうリスクがある。ケータイ世代の子どもたちに、親はどのようにケータイコミュニケーションのあり方を教えればいいのだろう。子どもとモバイル社会のあり方を研究テーマの一つとしているNTTドコモ・モバイル社会研究所研究員の遊橋裕泰さんと萩原徹太郎さんに話を聞いた。

デジタルARENAより転載)

中学校入学時に一気に伸びるケータイ所有率

小学校からケータイを持つ子どもが増えていると言われてますが、子どものケータイ所有率はどうなっていますか。

「ケータイ利用が社会へどんな迷惑をかけてしまうのかを、親は子どもに理解させなくてはいけません」と語る遊橋氏

遊橋氏:ケータイの利用開始時期の低年齢化は確かに進んでいます。私たちも2005年から所有率の調査を行っているのですが、特に去年から今年にかけての伸びが著しいですね。やはり昨年、キッズケータイが発売されたことが大きいと思います。それまでは躊躇していた親御さんでも、子どもに持たせるようになりました。小学校高学年で、だいたい3割ぐらいの所有率になっています。

親が子どもにケータイを持たせる理由は何ですか。

遊橋氏:子どもとの連絡の手段として、ケータイを渡すケースが多いようです。小学生も高学年にもなると、塾通いを始めるようになって帰宅時間が遅くなりがちですし、両親が共働きを始める家庭も増えますからね。

 子どもも最初は親の意図通り、親と連絡をとるためにケータイを使っています。小学生のケータイ所有率が伸びているといってもまだ3割程度ですから、友達が持っているとは限りません。だから主なコミュニケーションの相手は親になるわけです。ところが中学校に進学すると、急に事情は変わります。小6のケータイ所有率が約3割なのに対して、中1になると一気に6割に跳ね上がるんです。そのためケータイで連絡をとる相手も、保護者から友達にがらりと移ります。

小学生から高校生までのケータイ所有率(「モバイル社会白書2005」より引用)
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その分だけ、親の目が行き届きにくくなりますね。

遊橋氏:そうですね。ですから子どもが親から離れてケータイを使い始めたときにトラブルを起こしたり巻き込まれたりしないように、注意を促すことが大切になります。ケータイの中で子どもが最もよく使う機能はなんといってもメールで、その次がカメラ、ウェブ、そして電話の順番になっています。ところが親の世代はケータイというと電話のイメージが強いので、メールやウェブを利用するときに気をつけなくてはいけないことを伝えないまま、子どもに渡すことが多いんですね。

 そのために起きている問題の一つがチェーンメールです。中学生は結構チェーンメールに乗っかり、自分でも何通も送ったりします。これを何人もが同じことをやると、ネットワークにかかる負荷は大変なものになりますよね。通信会社はメールの増大に対応するために施設を増設しなくてはならず、結果的にユーザーの通信料金にはね返ります。ケータイは社会性を持ったメディアですから、自分の行動が社会にどんな迷惑をかけてしまうリスクがあるのか、きちんと子どもに理解させなくてはいけません。