総務省が公表した2.5GHz帯免許方針案に対する意見募集が6月中旬に締め切られた。同案には,3分の1未満の出資による参入の道しかなくなる第3世代携帯電話(3G)事業者のうち,NTTドコモとKDDIが反論した。ただし新規事業者を募って競争を促進するという免許方針案を覆すのは難しく,総務省案の通りに方針が確定しそうだ。
既存3G事業者でも広帯域無線アクセスシステム(無線ブロードバンド)の新通信サービス市場を創出できる。申請を受け付けるべき──。
NTTドコモ,KDDIが総務省に提出した意見書は,こうした趣旨でつづられていた(表1)。3G事業者の単独参入の道を閉ざした総務省の免許方針案に反論した格好だが,両社とも方針案を覆せるとは考えていないようだ。
表1●総務省が示した2.5GHz帯免許方針案に対する主な通信事業者の意見の概要 MVNO:仮想移動体通信事業者 [画像のクリックで拡大表示] |
写真1●KDDIの小野寺正代表取締役社長兼会長 3分の1未満の出資による無線ブロードバンド事業への参加についても「主導権を取ってやっていきたい」と意欲を見せる。 |
総務省の免許方針案は,新規事業者の参入を促進する競争政策を強く打ち出したもの。3G事業者の中でNTTドコモとKDDIは営業エリア内の端末台数シェアが25%を超える支配的(ドミナント)通信事業者で,接続約款の公開などが義務付けられている。こうした両社にとって,今回の方針案を真っ向から否定はしづらい。基本的には免許方針案を前提に,無線ブロードバンド参入を目指す腹積もりのようだ。
6月13日に会見したKDDIの小野寺正・代表取締役社長兼会長(写真1)の発言からもその思いは見て取れる。「KDDI単独でやりたかったし,そのための準備もしてきた。方針案は残念」と述べた一方で,3分の1未満の出資での参入についても「主導権を取ってやっていきたい」と意気込みを語った。
3G事業者のソフトバンクモバイルは,意見書を提出せず全面的に賛成の立場を取る。6月21日にはイー・モバイルと共同で,モバイルWiMAX事業への参入を検討していると発表した。
「3分の1未満」に見える総務省の意図
今後は「3分の1未満」という出資比率が無線ブロードバンド事業の行方を左右する鍵になりそうだ。同事業はサービス面でも技術面でも全く新しいもの。無線系のノウハウを持つ携帯電話事業者をもってしても未知の領域で,新規事業者がすんなりと事業を始められるほど生易しいものではない。
2年前の1.7GHz帯の3G免許割り当ては,「既に出来上がった技術による新規参入だった」(総務省)。ところが2.5GHz帯で採用される見込みのモバイルWiMAXは開発中の技術であり,基地局や端末のメーカーを巻き込んで開発できる事業者でないと参入は難しい。「3分の1未満」という数字の裏には,新規参入を促しながら,最大の難関となる事業化のステップで既存3G事業者の力を借りたいという,総務省の意図が透けて見える。