ソフトバンクは英アイピー・アクセスやモトローラ,NECなど内外の有力ベンダー8社と共にフェムトセルの実証実験を開始した。国内の通信事業者がフェムトセルの取り組みを具体化させたのは,これが初めてである。

 フェムトセルとは,家庭やオフィス内に設置する超小型の携帯電話基地局のこと。手軽に基地局を敷設できるのが特徴だ。フェムトセルは,家庭やオフィスに引き込んだブロードバンド回線経由で携帯電話網(コア・ネットワーク)につないで使う。2008年の商用化を目指し,世界中のベンダーが製品化を進めている。

 ソフトバンクモバイルの宮川潤一取締役専務執行役員兼CTOは「フェムトセルは屋内におけるカバレッジの改善との高速通信など,新たなユーザー・メリットを実現できる」と語る(図1)。屋外の基地局を使う場合は,複数ユーザーで帯域をシェアするため速度が下がりがちだが,「フェムトセルは設置ユーザーが独占できるので,理論値に近い高速通信が期待できる」(宮川CTO)。

図1●ソフトバンクが目指す「フェムトセル」のサービス像
図1●ソフトバンクが目指す「フェムトセル」のサービス像
フェムトセルとはユーザー宅内に設置する超小型の携帯基地局のこと。商用のブロードバンド回線経由で携帯電話のコア・ネットワークに接続する。ソフトバンクはYahoo!BBなど自社のブロードバンド回線のほか,NTTのBフレッツとも接続したい考えである。

 また,家庭内のデジタル機器向けのサービスを提供するために,フェムトセルにホームサーバー機能を持たせることも考えているという。

NTTのBフレッツとの接続も

 実証実験は2007年6月から12月にかけて実施し,2008年春の商用化を目指す。フェムトセル本体は,当初は無料で配布したいとする。

 フェムトセルと接続するブロードバンド回線にはYahoo! BB ADSLサービスなど自社サービスを使う。「いずれはNTTのBフレッツとも接続できるようにしたい」(宮川CTO)。

 フェムトセルの商用化に向けた課題としては,(1)フェムトセルの価格,(2)システム技術,(3)制度--がある。(1)については,「フェムトセルは現状500ドル程度とまだ高い。将来的には100ドル程度になってほしい」(宮川CTO)。(2)では,フェムトセルと既存基地局の干渉回避や,コア・ネットワークとの接続方法を確立する必要がある。

 (3)の制度面では,現状ではフェムトセルは既存の携帯基地局と同じ位置付けになるため,手軽に取り扱えない点が難点という。例えばフェムトセルを接続する回線にユーザーが契約するブロードバンド回線は利用できず,フェムトセルには無停電電源装置の設置が義務付けられる。この状況を鑑みて宮川CTOは,「フェムトセルを国内で本格展開するには,法律の改正が必須」との考えを示した。