◆今回の注目NEWS◆

◎地方公共団体の平成17年度版バランスシート等の作成状況について (総務省、7月6日)
http://www.soumu.go.jp/s-news/2007/070706_2.html

【ニュースの概要】総務省は、2005年度における地方自治体のバランスシート作成状況に関する調査結果を公表した。政令指定都市を除く市区町村では、連結のバランスシートを作成した団体は5.6%にとどまった。


◆このNEWSのツボ◆

 総務省から2005年度のバランスシート等の作成状況が公表された。

 これによれば、都道府県及び政令指定都市では、普通会計のバランスシートと行政コスト計算書の作成割合は100%となっている。政令市以外の市町村ではバランスシート作成が約60%、行政コスト計算書の作成が約40%で、平成16年度と比較すると、それぞれ約10%増加した。ただし、自治体の全会計、さらには連結ベースでのバランスシートとなると都道府県、政令指定都市では90%を超えているものの、政令市を除く市町村では、まだ作成している自治体の割合は10%に満たない。

 ところが、今や自治体では、バランスシートと行政コスト計算書の「2表」どころか「4表」への対応が迫られている。と言うのは、昨年6月に公表された、いわゆる「骨太の方針2006」に基づいて、同8月31日に公表された「地方公共団体における行政改革の更なる推進のための指針」において、「取り組みが進んでいる団体、都道府県、人口3万人以上の都市は、3年後までに、取り組みが進んでいない団体、町村、人口3万人未満の都市は、5年後までに、4表の整備又は4表作成に必要な情報の開示に取り組むこと(しかも連結)」との方針が示されたためである。

 ここでいう「4表」とは、従来の貸借対照表(バランスシート)、行政コスト計算書に加え、資金収支計算書(企業で言うキャッシュフロー計算書に相当)、純資産変動計算書(公会計固有の概念。要するに財政支出によって、納税者の資産とも言える自治体の純資産がどのように変動したかを示す表)の4つであり、これを基本的には3年以内、遅いところでも5年以内に作成せよ……ということになったのである。

 実際、現状の2表ですら、作成が完全でない状況で、いきなり4表の作成を……と言われても、簡単ではない。総務省はこうした4表の作成に関し、静岡県浜松市と岡山県倉敷市をモデルとして、実際に4表の作成試行を行い、こうした実証に基づいた、4表作成のための「マニュアル」も、今年の9月初めまでには公表されると言われている(関連記事)。まさに、状況としては「待ったなし」である。

 こうした流れの背景には、夕張市の財政破綻に端を発する、自治体財政の危機と、地方への権限の流れがある。困難に陥った自治体の財政状況打開のためには、資産売却などが有効な手段としてクローズアップされてきているが、その基礎となる、資産と負債の把握自体が、現状では、あまりにお粗末であり、資産売却効果も正確には予測できない。これでは困る。また、地方への権限委譲に伴って、地方自治体財政のアカウンタビリティの確保というニーズも高まっている。「ある日突然、自分の住んでいる自治体が破産した!」では洒落にもならない。

 いずれにせよ、地方自治体の公会計改革は、この夏から2009年までは、大きな動きを見せることになる。自治体の財政課の皆さんは、こうした動きへの対応で頭がいっぱいで、従来型の「2表」の作成は、もはや関心の中心からははずれてきているかもしれない。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。