2008~2010年度の電波利用料を検討する「電波利用料制度に関する研究会」が6月末に報告書案を公開した。ポイントはテレビ放送局からの電波利用料負担を大幅に増やすことと,各省庁からも電波利用料を徴収すること。7月中旬までパブリック・コメントを募集し,7月末に報告書を取りまとめる。

 電波利用料とは,電波監視や電波の有効利用といった電波利用共益事務にかかる費用への負担を,無線局免許人から求めるものである。総務省は4月に2008~2010年度の電波利用料にかかわる研究会を発足。その制度や使途,料額を中心に議論を重ねてきた。

 制度では,共益事務の在り方や逼迫(ひっぱく)する帯域での受益と負担の考え方などを整理した。使途では,国際競争力の強化など新しい使途の追加を含め検討した。これらを積み上げると,電波利用料の総額は前の3年間よりも増大する見通しとなった。

 電波利用共益費用は,周波数逼迫対策にかかわる「a群」とその他の「b群」に分かれている。a群は利用する周波数帯域幅に応じて,b群は無線局数に応じて,免許人から徴収する。

 今回の研究会では使途の追加や金額の見直しにより,a群の比率が高まった。これに伴い,広い周波数帯域を使う免許人が負担する電波利用料の金額が増えることになった(図1左)。

図1●電波利用料制度に関する研究会が報告書に記載した,2008年度以降3年間の料額の考え方
図1●電波利用料制度に関する研究会が報告書に記載した,2008年度以降3年間の料額の考え方
 電波利用料の使途では,3年前に比べ周波数逼迫対策を扱うa群の総額が増加した。料額のあり方では,370MHzの周波数を利用するテレビ局に帯域に応じた電波利用料を料額の算定する必要があるとの方針が示された。

テレビ局の利用料は数十億円増える

 料額のあり方で目立つのは,テレビ放送局と各省庁の無線局が支払う電波利用料に変更があったこと。テレビ局については,帯域幅に応じた電波料額の算定が行われるべきと報告書に記載された。試算ベースで数十億~百数十億円の負担増になる(図1右)。

 テレビ局は2011年の地上放送のデジタル化完了まで多大の設備投資が必要になるなどの事情から,現行の370MHzよりも少ない電波利用料の支払いが許されてきた。しかし2006年3月閣議決定の規制改革・民間開放推進3カ年計画が,「放送事業者の電波利用料は,その使用帯域幅,出力に見合った額に改めて見直す」と明記。帯域幅に見合った電波利用料を支払ってきた携帯電話事業者も,是正の声を上げていた。

 テレビ放送局側は,研究会で電波利用料の増額に強行に反論。第5回会合の公開ヒアリングでは,「なぜこうした案が出るのかわからない」と主張する一幕もあった。報告書案は,これら主張を踏まえながらも,帯域幅に応じた負担という原則からテレビ局に負担増を求める方向を打ち出した。

 国の省庁などが利用する無線局からも,電波利用料を徴収する方向も示された。電波利用料は国庫で循環するため徴収の実益に乏しいうえ,事務処理の煩雑化を招くなどの理由から各省庁からは徴収してこなかった。

 報告書案には,周波数の有効利用の観点から省庁などでも電波利用料を支払うのが適当と記載された。利用率が高いのは警察庁や国土交通省,海上保安庁など。試算では全省庁総額で十数億円を徴収することになりそうだ。

 事務局の総務省電波部電波政策課電波利用料企画室は,7月下旬の研究会最終回で報告書を取りまとめる。ここで決まった方針案に基づき,個々の電波利用料の料額を年末ころまでに策定する計画だ。