NTTアイティは日本・中国間におけるインターネットの通信品質を独自に調査し,同区間の具体的な調査結果を国内で初めて公開した。通信品質の目安とされるパケット損失は,平均で約2割に上ることが判明。原因は不明だが,香港経由のルートに変更したところ,パケット損失をほぼゼロに抑えることに成功した。

 Web会議サービス「MeetingPlaza電網会議室サービス」を提供するNTTアイティが,日本と中国間のインターネット回線の品質について危機感を抱いたのは,2005年秋のこと。「曜日・時間帯を問わず,MeetingPlazaを使ったビデオ映像の劣化が頻発した」(加藤洋一Web会議システム事業部事業部長)。それ以前から一部の時間帯での品質劣化は生じていたが,その状況が一段と深刻になったのだ。

 この問題を重く見たNTTアイティは,本格的な調査に乗り出した。具体的には,上海のデータ・センターに計測用のサーバーを設置し,MeetingPlazaのサーバーを設置する大阪のデータ・センターとの区間のパケット損失を1年半にわたって計測した(図1)。結果は驚くべきもの。日本・中国間のインターネット回線のパケット損失率は約2割(写真1)。ひどいときには4割近くに達していたのだ。「5%を超えると音声の会話が成り立たない」(加藤事業部長)ことから,2~4割というパケット損失は尋常ではない。

図1●NTTアイティが実施した,日本・中国間のインターネットにおけるパケット損失計測とパケット損失を防ぐ方法
図1●NTTアイティが実施した,日本・中国間のインターネットにおけるパケット損失計測とパケット損失を防ぐ方法

写真1●上海・大阪間のパケット損失の計測結果 2007年1~3月の間に,平均で17.79%のパケットが廃棄されていた。
写真1●上海・大阪間のパケット損失の計測結果 2007年1~3月の間に,平均で17.79%のパケットが廃棄されていた。

香港経由にすると損失はほぼゼロに

 パケット損失の原因はいまだにつかめていないが,日本・中国間のパケット損失を抑える方法を発見した。Web会議のリレー・サーバーを香港のデータ・センターに設置し,日本と中国の通信を香港経由でやり取りさせるという方法だ。これでパケット損失をほぼゼロにまで抑え込めたという。

 加藤事業部長は「利用中のサービスがアプリケーション・レベルでルーティングできるなら,解決できる可能性は高い」と見る。香港でのハウジング・サービスの利用料金は月額30万円程度で済んだという。

 中国の通信事業者と接続しているNTTコミュニケーションズやKDDIは日中間のインターネット回線について,「トラフィックは急増しているものの,早急な対策を必要とする状況にはない」としている。今回の結果がすべてのユーザーに当てはまるとは限らないが,同様の問題で悩んでいるなら検討してみる価値はある。