写真1●特製カーネルすごろく
写真1●特製カーネルすごろく
[画像のクリックで拡大表示]

 Linuxの普及促進を目的とする非営利団体「The Linux Foundation Japan」や,毎年開催される展示会「LinuxWorld Expo」などのおかげで,海外在住のLinuxカーネルの主要開発者が頻繁に来日し,直接話を聞ける機会が増えています。

 2007年7月10日に開催された,技術者向けイベント「The Linux Foundation Japan Symposium」では,米Google社の大規模クラスタ/グリッド・システムのエンジニアであるPaul Menage氏やThe Linux Foundation COOのDan Kohn氏らが来日し,Linuxカーネルの最新動向や仮想化,Linux標準化などについて講演しました。

 本日(2007年7月20日)も,VA Linux Systems Japan主催によるカンファレンス「Xen Conference Japan 2007」が都内で開催されています。同カンファレンスでは,仮想化ソフト「Xen」を開発するオープンソース開発コミュニティ「Xen Project」の創始者であるIan Pratt氏が基調講演を担当しています。XenはLinuxカーネルと密接に連係して動作しますので,Linuxカーネル関連の実装についての話も期待できそうです。

 上で挙げたのは,Linuxカーネル関連の直近の講演に過ぎません。これら以外にもLinuxカーネルに関する講演は増加しているように感じます。Linuxが普及するにつれて,その中核技術であるLinuxカーネルへの関心も高まっているからでしょう。

キーワードを押さえれば講演内容を理解しやすい

 Linuxカーネルに関する講演は事前登録が必要だったりするものの,ほとんどが無料で聴講できます。Linuxの仕組みを詳しく知りたい,あるいはLinuxの開発に参加したい人にとっては魅力的です。ただ,Linuxカーネルの基礎知識を持たないで参加してみると,ほとんどの内容が理解できずに戸惑うことになります。

 なぜなら,Linuxカーネルの最新技術の講演を理解するには,Linuxカーネルに関する基本的な「キーワード」を知っていることが前提条件になるからです。例えば,先に挙げた「The Linux Foundation Japan Symposium」の講演は,「メモリー・オブジェクト」「ファイル・システム」「ユーザー空間」といったキーワードが分からないと,話についていけません。

 打ち明け話になりますが,著者はLinuxカーネル関連の講演に参加したときでも,その面白さをすぐには理解できませんでした。講演内容のキーワードをメモして持ち帰り,Linuxカーネルのオンライン・ドキュメントや専門書,過去のニュースなどを調べてはじめて,講演内容のポイントがどこにあるかがようやく把握できました。

 こうした体験を通じて感じたのは,Linuxカーネルについて要点(キーワード)をしっかり押さえた文献の必要性です。ソフトウエア工学などでOSの基礎を習ったことがない人でも,楽しく読めてLinuxカーネルの基本的な仕組みがしっかり分かる。分厚い書物やオンライン・ドキュメントを調べなくても,その1冊さえ読めば,Linuxカーネルの基本が分かる。

 こうした「Linuxカーネル解説書」を作りたくて,「日経Linux」で2006年1月から開始した連載が「カーネル探検隊」です。連載を担当してカーネルの仕組みを図示してみると,合理的なだけに意外と理解しやすいと感じました。次第にLinuxカーネルの要点が身に付いてくると,講演に参加した際には,どこが面白いのか,どこに注目すべきなのかがすぐに分かるようになりました。

前代未聞の「カーネルすごろく」でキーワードに慣れ親しめる?

 1年以上にわたった「カーネル探検隊」を加筆修正し,新規記事と合わせて発売したムックが「Linuxカーネル徹底理解」です。

 何より,楽しく読めて身に付く内容を心がけました。そのこだわりの一つが,A2版のとじ込み付録「特製カーネルすごろく」です(写真1)。すごろくを楽しむだけで,Linuxカーネルのキーワードに慣れ親しむことができます。

 もちろん,誌面ではそれぞれのキーワードを詳しく説明しています。重要性を増すLinuxカーネルへの理解を深めるために役立てば幸いです。