企業情報システム開発は納期が決まっているため,カットオーバーが迫ると,ITエンジニアは過重労働になりやすい(ちなみに,これは,締め切りが決まっている雑誌編集にも言えるかもしれない)。プロジェクトが危機に陥れば,その傾向はなおさら強くなる。

 過重労働でストレスがたまると,うつ病などの「メンタル不全」にかかりやすくなる。いまさら説明するまでもないだろうが,うつ病とは,「気分がひどく落ち込んだり何事にも興味を持てなくなったり,おっくうだったり,なんとなくだるかったりして強い苦痛を感じ,日常の生活に支障が現れるまでになった状態」(厚生労働省の「うつ対応マニュアル」より)を言う。皆さんの周りにも,そういう症状の方がいらっしゃるのではないだろうか。

 実際,雑誌「日経ITプロフェッショナル」が2004年にWebサイトで実施した調査(有効回答数は2706人)では,「心の病と感じたことがあるか」という質問に55.0%が「ある」と答えており,医師から「心の病である」と診断された経験のある人は19.4%と約2割に上った。診断された病名は「うつ病」が65.6%と最も多かった。

 厚生労働省の「うつ病を知っていますか?」(国民向けパンフレット案)によれば,全生涯で見ると約15人に1人,過去12カ月間には約50人に1人がうつ病を経験している。うつ病にかかっている人の4分の1程度が医師の診断を受けているが,残りの4分の3は病状で悩んでいても病気であると気づかなかったり,受診しづらかったりして,医療を受けていない。医師の診断を受けずに,うつ病の症状に悩んでいる人が結構いるのだ。
 
 もちろん,うつ病などのメンタル不全になった場合は,医師の診断を受けて適切な治療を行ったり,専門家のカウンセリングを受けたりすることが必須である。だが,なによりも大切なのは,メンタル不全にならないための日頃の「予防」ではないだろうか。

 メンタルヘルス不全を予防するためには,エンジニア一人一人がメンタルヘルスについての正しい知識を持った上で,自分自身のストレス状態に気づく必要がある。人間が高いストレスにさらされると,頭痛や肩こり,不眠や食欲不振など,なんらかの「シグナル」が現れる。自分自身でこれらのシグナルに気づくことが,まず重要なのだ。

 そのうえで,ストレスを軽減する。つまり「リラクゼーション」だ。最も基本的なリラクゼーションは「質の高い睡眠」だが,それ以外にも,人によって様々なリラクゼーションがある。それは適度な飲酒だったり,バイクのレースだったり,楽器の演奏だったり,マッサージだったり,いろいろだろう。自分自身のストレスに気がつき,きちんとリラクゼーションできれば,つまりストレスを自分自身でコントロールできれば,メンタルヘルス不全にかからずに元気に仕事を続けられる可能性は大幅に高まる。

 筆者は,過重労働になりやすいITエンジニアにとって,自分自身の身を守るために,メンタルヘルスの正しい知識を持ったうえでストレスをコントロールすることは,技術的なスキルや知識を学ぶのと同じくらい重要なことだと思う。

 そこで,ITpro Skillupでは,近々メンタルヘルスやリラクゼーションに関係する記事を充実させたいと考えている。リラクゼーションに役立つ数本の連載記事で構成する計画だ。メンタルヘルスやリラクゼーションに関して「こんな記事が読んでみたい」という要望があれば,ぜひコメント覧にお書きいただきたい。