今回のアンケートでは,NTTがショールームで展示する企業向けサービスに対する関心も聞いた。その中で最も関心が高かったのは,最大10Gビット/秒の広域イーサネット・サービスである(図1)。7割以上のネットワーク担当者が関心があると回答した。

図1●広帯域の広域イーサネットに大きな期待が集まる
図1●広帯域の広域イーサネットに大きな期待が集まる
ユーザー企業は広帯域の広域イーサネットに関心が強い。アプリケーション・サービスで意外に健闘したのはPTMN。他のサービスと比べコンセプトが目新しい点が期待を集めたようだ。

 最近の企業ネットワークでは,末端の拠点までアクセス回線のブロードバンド化を進めている。このため,センター側には拠点からのトラフィックを十分にさばけるだけの高速かつ信頼性の高い回線が必要になっている。広帯域の広域イーサネットに注目するネットワーク担当者が多かったのは,このような理由からと考えられる。

画像共有型プッシュ・ツー・トークが検討

 これに対し,アプリケーション・サービスへの関心は総じて低く,50%を超えたものは一つもない。ただし,意外に健闘したと言えるサービスはある。広域イーサネットに次ぐ42.0%の関心を集めた「PTMN」(push to talk with multimedia over NGN)だ。

 プッシュ・ツー・トークは,1対複数で同時にコミュニケーションが取れるサービス。携帯電話向けにNTTドコモなどが提供中だが,今のところ大ヒットとは言えない状態にある。にもかかわらず,動画や画像などのマルチメディア・データを共有しながらコミュニケーションが取れるというPTMNに,ユーザー企業が目新しさを感じたようだ。

 PTMN以外のアプリケーション・サービスが関心を呼ばなかった原因は,「NGNならでは」と言えるだけの目新しさに欠けるところかもしれない。Web会議とグループウエアの連携,3.4kHzよりも広い帯域を使ったIP電話,テレビ会議といったアプリケーションは,いずれも現状のインフラでも実現できている。

 テレビ会議にはハイビジョン品質という特徴があるものの,それでも関心があると答えたネットワーク担当者は23.5%にとどまった。業務で利用する分には,ハイビジョン級の映像品質は必要ないと判断したネットワーク担当者が多かったようだ。

網機能を使うなら認証やプレゼンス

 NTTはNGNの網機能の一部を,SNIと呼ぶインタフェースで公開する見込みである。これを活用すると,ユーザー企業は認証や帯域制御といった網機能を取り込み,社内ネットワークのセキュリティを強化したり,IP電話の品質を確保したりできるようになる。

 このような網機能の利用に関心があるかを尋ねたところ,約半数のネットワーク担当者が「関心がある」と回答した(図2左)。まだ十分に認知されていない機能だが,関心は相応に高いと言える。

図2●利用してみたいネットワーク機能では回線識別認証が突出
図2●利用してみたいネットワーク機能では回線識別認証が突出
公開される可能性があるネットワークの各機能に関心のあるユーザーはおよそ半数だった。
[画像のクリックで拡大表示]

 網機能の利用に関心がある回答者に,複数回答形式で利用してみたい機能を聞いたところ,実に85.3%のネットワーク担当者が「回線識別認証」を選んだ(図2右)。

 回線識別認証とは,回線に対応付けられたID情報を参照することで,正規のユーザーによるアクセスかどうかを識別する機能である。この機能を利用して,指定した回線以外からの接続を遮断すれば,なりすましの危険性を減らせる。ユーザー企業の間で,なるべく簡単にセキュリティを確保したいというニーズがいかに高いかを象徴する結果と言える。

 このほか,通信相手の状態を把握できる「プレゼンス」,所在地を把握できる「位置情報」,エンドユーザーのトラフィック使用量の把握に応用できる「課金」が,50%以上の関心を集めた。NTTがSNIでどの程度まで機能を公開するかはまだ決まっていない。しかし,ユーザー企業の側には確かなニーズがあるようだ。