日経コミュニケーション編集部は5月24日から6月4日にかけて,企業のネットワーク担当者で構成する読者モニターに,NGNにかかわるアンケートを実施した。

 結果から浮かび上がってきたのは,通信事業者の狙いとは異なるNGNの側面に期待するユーザーの姿である。その本音をまとめると,こんな声になる。「高品質をうたうこと自体はよい。ただし,まずは安全で止まらないインフラを作ってほしい」--。

「聞いたことはあるがイメージがわかない」

 NTTのトライアルが始まってから半年以上が経過したこともあり,NGNについて耳にしたというネットワーク担当者は着実に増えていた。およそ9割が何らかの形でNGNという言葉に触れたと回答した(図1)。

図1●NGNの認知度は着実に向上,関心も高い
図1●NGNの認知度は着実に向上,関心も高い
ある程度理解している企業は前年の2.5倍以上に増えた。関心あるユーザーの割合も6割超と高い水準にある。

 「内容まである程度理解している」と回答したネットワーク担当者は38.8%に達した。これは,昨年6月に本誌が実施した同様の調査の2.5倍を上回る数字である。関心を抱いている企業も約6割あり,相応に高い水準と言える。

 ただし関心があると言っても積極的に導入を検討するようなレベルではない。アンケートの自由記入欄に寄せられた声を見ると,「初歩的なことから知りたい」,「今ひとつ利用イメージがわかない」など,基礎的な情報を求めるものが多数にのぼった。通信事業者や機器メーカーら売り手とは,意識に違いがある。

フレッツ網の大規模障害が影響したか

 売り手とユーザー企業の意識の違いは,NGNに期待する機能の違いにも現れている。

 NTTは,通信品質の高さやきめ細やかなQoS(quality of service)機能をNGNの売り物にしようと積極的にアピールしている。一般ユーザー向けトライアルのメニューからも,ショールーム「NOTE」でハイビジョン品質のテレビ会議システムなどの展示に力を入れていることからも,その狙いは明らかである。

 しかし高品質やQoS機能は,企業のネットワーク担当者にはさほど魅力的に映っていない。NGNに関心があると回答した119社に,NGNの特徴として魅力に感じるものは何かと複数回答形式で聞いたところ,QoSに魅力があるという回答は39.5%にとどまった(図2)。

図2●ユーザーの期待は信頼性とセキュリティに集中
図2●ユーザーの期待は信頼性とセキュリティに集中
現状のベストエフォート型のブロードバンド回線の信頼性に不満を感じる企業や,インターネットVPNでは社内ネットワークの安全な運用に不安を感じている企業が多いことが分かる。

 それよりも多くのユーザー企業が期待しているのは,現状のネットワークよりも高い信頼性を実現することだった。実に63.9%の企業が期待を寄せている。本アンケート実施直前の5月15日に,NTT東日本のフレッツ網で大規模障害が発生したことが背景にあるようだ。

 信頼性に続いて期待が大きいのはセキュリティの確保の容易さで,52.9%にのぼった。拠点間通信にインターネットVPNを利用する企業は,VPN機器の運用・保守の面倒さに頭を悩ませていることが少なくない。さらに最近では,他社ともネットワークを介してデータをやり取りする機会が増えており,企業の間で適切なユーザー認証をしたいというニーズが高まっている。負担が大きい認証システムなどを個別に構築する手間を省き,簡単にセキュリティを担保できる機能をNGNが実装すれば,ユーザー企業の関心を引く可能性が高い。