写真●山田 徹也氏 IT&業務改善室長
写真●山田 徹也氏 IT&業務改善室長  (写真:吉田 明弘)

 ほとんどのソリューションプロバイダは、至れり尽くせりのサービスを提供しようとする。しかし、当社はそんなサービスを求めていない。至れり尽くせりのサービスでは、私たちに実力が付かないからだ。ソリューションプロバイダに期待することは、システムを導入した後、うまく運用していけるだけの力を我々に付けてほしいということにある。

 当社は2001年2月から2004年4月にかけて順次、ERP(統合基幹業務システム)パッケージを使った新システムに移行した。このプロジェクトで主に会計機能の開発を担当したソリューションプロバイダのやり方が、我々の期待に応えるものだった。彼らはドキュメントの作り方や、「こういった業務なら、こう改善した方がいいですよ」といったアドバイスをくれるだけ。仕様書、業務フロー、システムフローなどのドキュメントは一切作らない。実際にアドバイスを基に議論して要件などを決定し、ドキュメントを作成するのは、すべて我々自身だった。

 このやり方では、システム部門や現場のユーザー部門の負荷が高まる。それでも、結果は良かったと思っている。内容を一つひとつ理解しながらドキュメントを作成することができたため、新システムや新しい業務への理解が深まったからだ。このため、新システムの導入や運用が進めやすくなった。

 至れり尽くせりのサービスを求めない理由は、もう一つある。コストが高いからだ。

 至れり尽くせりのサービスを発注すると、シニアコンサルタントやジュニアコンサルタントの肩書きを持つ人々が多数、業務改善プロジェクトに参加してくる。しかし、実際に我々の業務を理解し、解決を図れるコンサルタントは一握り。大半はドキュメントを作成するだけの単なる作業員でしかない。入社間もない新人が、ジュニアコンサルタントの肩書きで参加することもある。それなのに、パッケージを使ったシステム開発ではシニアコンサルタントで一人当たり月 150万円、ジュニアコンサルタントで同100万円が相場だ。

 そこで、当社では事務系の派遣社員を活用して、参加するコンサルタントの人数を必要最小限に抑えている。対象業務の経験を持つ派遣社員にプロジェクトの最初の段階から参加してもらい、業務改善の検討から仕様書の作成、操作方法の習得とマニュアルの作成、本番稼働後のヘルプデスクまでを一手に引き受けてもらう。

 派遣社員の人件費は、最大でも一人当たり月50万円。彼らは短期間で仕事を覚えることに慣れているから無駄がない。しかも新システムの対象業務のスキルを持ったベテランを選んでいるため、コンサルタントよりも業務に詳しい。私たちが雇っている形だから、我々の立場で業務改善などの意見を聞かせてもらえる。彼らは本当に優秀だ。

 ソリューションプロバイダも人件費を下げられないのなら、短期間で効率良く仕事を仕上げるような提案を、どんどん出してほしい。(談)