富山 隆 氏
森ビル・インベストメントマネジメント
資産運用部長、一級建築士

 自作して使い続けてきたExcelシステムを先頃、廃棄し、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを駆使した新システムに切り替えた。ただし、ユーザー・インタフェースはこれまでのExcelシートを踏襲している。慣れ親しんできたユーザー・インタフェースまで丸ごと変えてしまうと、かえって業務の生産性が落ちてしまうと判断した。Excelの利用をすべて否定するのではなく、適材適所で活用するのが得策と思う。

 作り直したシステムは、不動産の運用益の予想額をシミュレーションし、投資家に報告するためのもの。非定型業務だが、業務には欠かせない重要なシステムである。当社は、「森ヒルズ投資法人」の投資信託業務を受託しており、複数の投資家から募った資金を不動産に投資し、運用益を投資家に配当している。

 新システムは、BIツールの「Hyperion System 9 BI+ Essbase Analytics」(米ハイペリオン製)を使って構築した。分析用のデータベースを用意しておき、ここに物件別収支および会計データをCSVファイル経由で登録する。後はEssbase Analyticsが備えている分析機能を使って様々なシミュレーションが可能になる。今年の1月から、新システムの基本設計を開始し、3月からテスト運用を始め、この7月に本格稼働させた。

 Essbase Analyticsに切り替えたことで、従来のExcelシステムで必要になっていた、Excelのシートにデータを張り付けたり、シート間でデータ連携したりといった操作は不要になった。廃棄したExcelシステムは、以前からExcelに慣れ親しんでいた私が、関数やシートリンク機能などを組み合わせて自作したものだった。私だけでなく、他の社員も投資家への報告業務にExcelシステムを利用していたが、私しかメンテナンスできないという問題や操作ミスが入る余地があることを懸念し、Essbase Analyticsに切り替えた。

 Excelシステムを廃棄、再構築するにあたって、データ分析用ツールを含む複数の手段を比較検討した。重視したポイントの一つが、「フロントエンド・ツールとしてExcelを利用できること」であった。Essbase Analyticsはそれが可能で、データの入出力やデータをグラフ化する際、シームレスにExcelで処理できる。Essbase Analyticsには専用のフロントエンド・ツールがあるのだが、グラフ作成など細かい作業については、Excelのほうが優れているし、なによりも我々利用者がExcelに慣れている。

(聞き手は菅井 光浩=日経コンピュータ)