NTT東日本のフレッツ網障害は,原因究明と対策作業が進んでいる。だが,ここで気になるのは「NTT西日本のフレッツ網で同様の問題は起こらないのだろうか」という点だ。今回,NTT西日本のフレッツ網だけでなく,KDDIやソフトバンクBBのIP網についても,構成と運用状況を緊急リサーチした。
NTT西日本のフレッツ網は,NTT東日本と名称は同じだが,構成や運用体制は全く別ものだ。そのため「今回,NTT東日本で障害の原因となった事象は,西日本のフレッツ網では起こらない」(NTT西日本の坂下啓輔サービスマネジメント部ネットワークサービス部門長)という。
では具体的な違いとは何か。一つは,IPv4とIPv6の網を物理的に分けているというルーター網の構成,二つめは,どちらの網も細かく経路の管理エリアを分けている点──である。
東西のフレッツ網が異なるのは,NTT西日本が独自にサービス開発をしてきたからだ。NTT東日本のフレッツ網の物理的なネットワークは一つで,そこにIPv4とIPv6のネットワークが論理的に混在している。しかしNTT西日本は,「フレッツ・ADSL」などを提供していたIPv4による既存のフレッツ網とは別に,フレッツ・光プレミアム網を構築している。(表1)
表1●NTT西日本のフレッツ網の運用状況 NTT西日本のフレッツ・サービス用のネットワークは,IPv4のフレッツ網とIPv6のフレッツ・光プレミアム網の二つに分かれている。NTT東日本は5月15日の障害以降,フレッツ網の経路数を減らし,IPv6のエリア分けを進めていく予定。 |
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NTT西日本では,IPv6を主に使い,既存のフレッツ網とはルーターなどの伝送装置を別に用意し,別ネットワークとして構築・運用している。わざわざIPv6網を別に作ったのは,電力系通信事業者のFTTHサービスに,IPv6のセキュリティ機能による付加価値で対抗しようと考えたからである。
フレッツ網とフレッツ・光プレミアム網は,IPのバージョンが違うとはいえ,物理的な網構成はほぼ同じである。どちらも「30個程度の『県内網』と,それらを接続する『県間網』に分かれている」(坂下部門長)。NTT東日本のフレッツ網も加入者系と中継系を分けているが,NTT西日本の方が細かく網を分けているようだ。
NTT西日本は県内網と県間網,IPv4とIPv6でそれぞれ異なるルーティング・プロトコルを使っている。IPv4網もIPv6網も,県内と県間で細かく経路の管理エリアが分けられており,障害が起こっても他県の網には波及しない設計になっているという。このため,主要なルーターが持つ経路数は最大1000~2000程度と,NTT東日本に比べると圧倒的に少ない。
他事業者もエリアは小さい
KDDIとソフトバンクBBのIP網も網の階層を分け,経路のエリアを細分化。障害を極小化できるようになっている。
KDDIのIP網は,細かくエリアを分けることで経路数を最小限に押さえているという。またソフトバンクBBが運用する“Yahoo! BB網”は,「コア網」,「メジャーエリア網」,「マイナーエリア網」に分けられており,エリア分けと経路の最小化を徹底している。経路数は数百レベルだという。