スポーツクラブ最大手のコナミスポーツ&ライフは、自社のスポーツクラブに導入しているフィットネスマシンをネットワークで接続し、運動記録を集中管理するシステム「e-エグザス」を構築している。同社の河野隆次商品開発本部副本部長に、同社の試みやヘルスケア業界のネット対応について話を聞いた。(聞き手は小野口 哲)


e-エグザスとはどういった仕組みなのでしょうか。

商品開発本部の河野隆次副本部長
 e-エグザスは、スポーツクラブ内のフィットネス機器や健康測定機器をネットワークでつなぎ、個人の運動履歴をセンターに蓄積する「個人トレーニング履歴管理システム」です。

 会員がスポーツクラブのフィットネス機器でどれだけ運動したかや、体組成計で測定した身体データなどをデータベースに蓄積します。会員は自分の運動量を確認するほか、目標に対する進捗状況や自分の健康状態の確認に使えます。この仕組みのためにフィットネス機器も自社開発しました。

 今年4月初め時点で、全体のほぼ4分の1に当たる56店舗に導入済みです。利用者は現在20万人程度まで増えました。

Web2.0の考えを健康管理にも持ち込む

 現在では、歩数計(イーウォーキーライフ)で計測した家庭や外出先の運動量も、ネット経由でデータベースに蓄積できるようになっています。イーウォーキーライフはUSB端子を持っているので、これをパソコン経由でネットワーク経由で送信するわけです。

 体重や体脂肪、基礎代謝量などを測ることが可能な体組成計も自社開発しています。計測データをイーウォーキーライフに保存して、同様の手順でデータベースに蓄積するのです。自分の運動履歴や健康状態は、パソコン向けの専用ソフトや、テレビに接続する専用機器を使えば、家庭でもチェックできます。

e-エグザスの仕組みにWeb2.0的な考えやサービスを組み込むことは考えていないのですか。

コナミスポーツ&ライフのスポーツクラブに設置したフィットネス機器
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 コナミとIIJが共同出資したインターネットレボリューションが、昨年12月に健康や運動、美容に関するポータルサイトの「i-revoケンコウ」を開設しています。今年3月末には、イーエズザスの運動履歴や健康情報をi-revoケンコウで見られるようにしました。

 ここでは少し突っ込んだ情報まで見られるように工夫しています。例えば、筋トレの状況を、筋肉の部位ごとに見られます。トレーニングした部位は赤く表示されます。筋肉はその部位ごとにどのくらいの間隔でトレーニングすればいいかが違うんです。この仕組みを使えば、今自分がどこをトレーニングすればいいかが分かるわけです。

 i-revoケンコウでは、Web2.0についてをどう取り込んでいくかを含めて、いろいろチャレンジしていくつもりです。会員のモチベーションを高めるには、やはりコミュニケーションが大切だと思うんです。お互い励まし合って、会員同士でいい関係が作れるようになればいいですね。

 経営の面から考えても、こういったサイトやコミュニティの存在が、会員の契約継続につながると考えています。今後はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)なども検討していきます。

コナミグループ入りしたことで動きが加速した

運動履歴などを確認できるCALORYMASTER(カロリーマスター)
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 元々当社では、フィットネスクラブの運動履歴を元にカウンセリングして、目標を設定し、次のトレーニング・メニューに反映させてきたのです。これを、会員の人が負担にならずに進められるように自動化しようというのがe-エグザスです。

 こういった施策を進められたのは、コナミグループに入ったことが大きかったと思います。e-エグザスの仕組みを進めるには、それに対応したフィットネス機器が必要になります。コナミはゲームメーカーで機器を開発する能力があるので、独自で機器を開発できるようになったのです。

運動履歴などを統一して管理していこうという試みは今回が初めてなのですか。

 運動履歴や健康状態をネットワークで共有しようという試みは過去からありました。例えば、アメリカでは1990年代後半から、フィットネスクラブの運動履歴を活用して、トレーナーと医師、本人がネットワーク経由でコミュニケーションできる仕組みが存在しました。ただし、インフラのコスト負担が大きかったことからそれほど普及しなかったのです。最近では国内でも、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、家庭用健康機器のの測定データを一元管理できるような通信技術を実用化するよう取り組んでいます。



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■変更履歴
事実と異なる点があったため、記事中の「イーエグザス(e-XAS)」を「e-エグザス」に、「ゲームメーカー参加になったことで動きが加速した」を「コナミグループ入りしたことで動きが加速した」に修正しました。お詫びして訂正します。 [2007/07/19 13:45]