Gartner, Inc.
Dale Kutnick Senior VP Director of Research
山野井 聡 Research Group VP


 IT(情報技術)の担い手である企業の情報システム部門は、技術を理解するとともに、自社のビジネスを理解し、ITを使ってビジネスにもっと貢献すべきである――。こうした指摘がされて久しい。では情報システム部門は、どのようなアクションを取るべきだろうか。

 ガートナーはこのほど、「ITリーダー」が取り組むべき役割を八つに整理し、取るべきアクションをまとめた()。ITリーダーとは、CIO(最高情報責任者)や情報システム部門長に業務報告する、現場の責任者である。いつまでにアクションを実施すべきかについては、ガートナーのこれまでのリサーチ結果や、全世界のCIOに対する意識調査などを参考にしている。

図●ITリーダーが取り組むべき八つの役割と取るべきアクション
図●ITリーダーが取り組むべき八つの役割と取るべきアクション
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 八つの役割それぞれで取るべきアクションの共通点は、「ビジネス視点のITマネジメント改革を今後2~3年の内に実施すべき」ということである。

 いくつか例を挙げよう。例えば、「IT基盤&運用」という役割のゴールは、さまざまな運用管理ツールを使って、ITインフラストラクチャの稼働状況のモニタリングや運用の効率化を進め、そこで得た情報を基に、ビジネス・ユーザー側のリーダーが経営判断に活用できる指標を提示することである。

 「セキュリティ&リスク管理」は日本企業においても火急の対応課題の一つだが、ITリーダーは、これをテクノロジ面ばかりでなく、ビジネス・リスクという視点でとらえる必要がある。セキュリティやリスク対策にかかわるIT投資は、一種の保険といえるが、この保険にどの程度の費用をかけるべきか。この問いに対する回答は、IT部門内では得られない。おそらくCFO(最高財務責任者)など他の経営層との対話と合意の中から、ITリーダーは最適解を見いださなくてはならないだろう。

 「アプリケーション管理」の役割では、現行のアプリケーション群をビジネス視点でとらえ、過剰なIT利用をしている部分に気付くセンスが要求される。日本企業においても、ほとんど使われていない業務アプリケーションの存在や、業務プロセスを自動化しすぎてかえって顧客満足度を下げている、といった例が少なくない。その場合、アプリケーションの廃棄や、顧客サービス向上のために、一部のプロセスを人手に戻すなどの対応を考える必要があるが、これもまたビジネス的な優先判断が前提となる。

 とはいえ、今回示した八つの役割はどれ一つとっても、改革に相応のコストと時間がかかる。したがって、すべての領域の改革を一気に実施することは現実的ではない。まずはCIOやシステム部門長が経営トップの意向を理解した上で、取るべきアクションに優先度を付け、担当するITリーダーを任命し、改革を進めていくことになるだろう。