Gartner, Inc.
Betsy Burton VP, Distinguished Analyst
堀内 秀明 Research Director


 ガートナーが2006年に1400人のCIO(最高情報責任者)を対象に実施した調査によると、2006年にCIOが取り組むIT案件の第1位は、「ビジネス・インテリジェンス(BI)アプリケーション」であった。少し前まで、BIは経営企画部門などが利用する分析用ツールといった位置付けだったが、今では企業のあらゆる部門が業務プロセスのパフォーマンスを測定し、改善していくための道具になりつつある。

 ちなみに先の調査で、CIOが取り組むビジネス案件の第1位は、「ビジネスプロセス改善」であった。つまりCIOやIT部門がビジネス志向を強めることと、BIへの取り組みは表裏一体になっている。

 全社にBIが広がっていくことからガートナーは、BIツールとアプリケーションの利用者数は2009年までに現在の2倍になるとのシナリオを想定。市場の拡大をにらみ、多くのソフトベンダーがBIツールやアプリケーション製品を相次いで投入している。

 ここで注意すべきは、BIを導入するにあたっては包括的なアプローチが欠かせない、ということである。BIツールの選定はアプローチのごく一部分に過ぎない。BI導入の推進役となる企業のITリーダーは、BIを使う人や組織、スキルにまで気を配らなければならない。

 ガートナーはBIの導入に有効な方法論の一つとして、「ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシ・センター」(BICC)を2008年までに設置することを推奨している。BICCは、全社にまたがる情報活用の司令塔となる組織である。

 に示したように、BICCは「ビジョンの確立(戦略と優先順位の決定)」、「技術計画の策定(アーキテクチャの決定とツール選定)」、「標準化(データ、ビジネスルール、ガバナンスに関して標準を決定)」、「(情報を分析し、意思決定に使える)ユーザー・スキルの育成」「(BI導入)プログラムの管理」など、合計七つの役割を担う。

図●ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシ・センター(BICC)の概要
図●ビジネス・インテリジェンス・コンピテンシ・センター(BICC)の概要

 七つの役割は、IT(情報技術)にとどまらず、ビジネスや分析のスキルといった領域にまでかかわるため、BICCにはIT部門出身者とビジネス部門出身者の両方を置く必要がある。どのような企業であっても、七つの役割を担える人材をそう多くは抱えていない。そこでBICCに人材を集約し、全社を横断的に支援する体制をとることが望ましい。BICCを組織上どこに設置するかは企業の戦略上の優先順位に依存するが、現場部門との継続的なコミュニケーションに加え、CEO(最高経営責任者)をはじめとする経営陣がBICCのスポンサーになるべきである。