米Microsoftが2007年中にリリースする予定の「Windows Home Server」と,企業向けのデータ・ベース・サーバーである「SQL Server」は,現時点では何の関連性もない。しかし長期的視野に立って考えると,この2つの製品の組み合わせには,大きな可能性が秘められている。キーワードは「マルチメディアの管理」だ。

 そもそもWindows Home Serverとはどのようなものだろうか。MicrosoftのBill Gates会長は,「今やデジタル機器とデジタル・メディアは,私たちの生活に欠かせないものとなっている。そしてその重要性は,これからどんどん増していくだろう。Windows Home Serverで私たちは,人々がどこからでも簡単に自分のデジタル・コンテンツにアクセスし,友人や家族と体験を共有することを可能にするという,新分野の消費者向け製品を開拓している」と語る。

 この説明を聞いた人は,「Windows OSが今日提供している機能と,Windows Home Serverは,理論的にそれほど変わらないではないか」という印象を受けるかもしれない。筆者はWindows Home Serverのことを,上級ホーム・ユーザー,特に複数のPCやノートPCを所有するユーザーが,現在自分のホーム・コンピュータで既にやっていることを,今よりも簡単にできるようにし,さらに写真や音楽,動画など家庭にあるメディアの管理機能を重点的に強化した製品としてとらえている。

 Windows Home Serverが前評判通りの高度なメディア管理機能を本当に有していることを,筆者は願っている。読者の中にも,筆者のように音楽や写真,動画,テレビなどの鑑賞を,シンプルで一元化された体験として楽しむために「Windows XP Media Center Edition」を買ってみようと思った人がいるだろう。さらに筆者のように,「所詮はWindowsなのだから,きちんと動作すると言われても,お気に入りのテレビ番組を見ている最中に『死のブルー・スクリーン』が現れて,イライラさせられるのが関の山だろう」という理由で,XP MCE PC(XP Media Center Edition)を買うのを怖がっている人もいるだろう。

 ここで,第1世代のWindows Home Serverが実際に成功したと仮定しよう(第2,第3世代まで成功しない可能性が高いが)。Windows Home ServerとSQL Serverの間に,一体何の関係があるのだろうか?

 Windows Home ServerとSQL Serverを結びつけて考えるのは多少無理がある,ということは筆者も認めよう。だが筆者は先日出されたMicrosoftのプレス・リリースに,SQL Serverの観点から興味をそそられたのだ。そのプレス・リリースには,サード・パーティによる製品がWindows Home Serverと連携して,以下の機能を提供できるようになると書かれていた。

・Windows Home Serverと連携して,消費者が自宅の照明システムや防犯カメラ,温度調節,AV機器などを管理するのを簡便化する

・自宅であろうと外出先であろうと,あらゆるテレビやPCの画面で,個人的なメディアやオンライン・コンテンツを楽しめる,完全で「常に利用できる状態の」デジタル・エンターテインメント体験を提供する

・Windows Home Server向けCDローディング・サービスは,顧客の全CDコレクションをWindows Home Server上に安全に格納できるように変換,転送する

・ユニバーサル・プラグ&プレイによる,Windows Home Serverから家庭内の様々なエンターテインメント機器へのメディア・ストリーミング

・製品は,500Gバイトから最大2Tバイトまでのストレージを選択できる

 Windows Home ServerとSQL Serverの関係について,そろそろお気づきになっただろうか。2Tバイトという容量が,家庭用ストレージの標準になったとしたらどうなるだろうか。2Tバイトといえば,小規模の企業には十分な容量である。それほどの容量が家庭用ストレージの標準になれば,それにつられて,従来のビジネス用データベースにかかるストレージ・コストも低くなると筆者は確信している。先述した魅力的な特徴の多くが,従来のデータベース・アプリケーションに直接関係のあるものでないことは,筆者も認めよう。歴史的に見て,データベース・サーバー(例えば,SQL Server)は,秩序立てて整理されていないデータの検索と格納が苦手であった。データの秩序が崩れる確率は,ストリーミング・ビデオとそれほど変わらないにもかかわらず,だ。

 だが体系的に整理されていないにもかかわらず,Windows Home Server上のメディア・データ・ベースには,信じられないほど大量のコンテンツが含まれている。検索と格納という観点から見ると,動画や他のメディア関連フィードのパーシング(解析)技術は,近年大幅な進歩を遂げている。そして,ますます多くの企業がこの市場に参入しようとしているのだ。動画はインターネットにおけるキラー・アプリケーションの1つとして頭角を現しており,それによって,必要なストレージとネットワーク帯域の数値が根本的に変わってきている。

 最終的に私たちは,体系的に整理されていないこれらすべてのデータの上に,検索可能なデータベースを構築する方法を見つけ出すだろう。そして,それによって全く新しいクラスのデータベース群が新たに生まれるはずだ。そこで筆者は,先回りして「Multimedia Database Management Systems(MMDBMS,マルチメディア・データベース管理システム)」という新しい用語を提唱してみたい(定着すればいいのだが)。

 Windows Home Serverのような製品が家庭向けに投入されることによって,普通の家庭に蓄積されている膨大な量のデータの検索や格納,アーカイブを可能にする製品への消費者の需要は,ますます増えるだろう。Windows Home ServerがすぐにSQL Serverに影響を及ぼすとは,筆者も思っていない。だがそのうち,Windows Home Serverのような製品が普及することによって,ストレージや検索技術の方向性が変化し,それが最終的には従来のデータベースにも影響を及ぼすだろうと筆者は考えている。

 前にも言ったように,Windows Home ServerとSQL Serverを結び付けて考えるのは,多少無理がある。それでも,掘り下げて考えるのが楽しいシナリオであることは間違いない。今は,Windows Home Serverが筆者のテレビにブルー・スクリーンを表示させないことを祈るのみである。