安達一彦
インテリジェント ウェイブ
取締役会長


 Appleが先頃発売した、携帯電話機能を備える情報端末iPhoneが話題を呼んでいます。アメリカの携帯電話機は二極化していて、企業でよく使われる高級品の中では、カナダのResearch In Motion(RIM)が開発したBlackberryが断トツのシェアを誇っており、続いてPalmOSという基本ソフトを搭載したものが少々ある、といった状況です。ちなみに私はBlackberryを使っており、通信会社はAT&Tです。

 一方、安価な通常タイプの携帯電話機は、フィンランドのNokia、韓国のLGやSamsung、アメリカのMotorolaといった企業の製品が主流です。いずれも簡単に使え、電子メールも送受信できます。

 Blackberry一色だった高級品の領域に最近、相次いで新製品が登場しています。SamsungのBlackJackがその一つです。これは、Microsoftの基本ソフトWindows Mobileを搭載する製品で、こうしたWindows Mobile搭載機は急速に増えてきています。そこにAppleが機能満載、デザイン秀逸のiPhoneで殴り込みをかけました。

 6月29日金曜日の午後6時に全米で売り出されたiPhoneはその日のうちに売り切れたそうです。私は土曜日のお昼に近くのニューヨーク図書館の前にあるAT&Tに行きましたが、完全に売り切れていました。店員が自慢げに“Hopefully next week you will get it”と言っておりました。

 幸いなことに見本を見せてくれましたので、10分間ほど触ることができました。操作性はすごくよく、しかも楽しい。今までの携帯電話のイメージを根本から変える画期的なものだと実感しました。思っていたより軽く、小さくて薄いので胸のポケットに入れて置けます。

 私にとっては日本語表示が重要です。AppleやAT&Tのウェブサイトには日本語表示について何も書かれていませんでした。日本語入力はさすがにできないだろうけれども、ひょっとして表示はできるのではないかと期待し、私のGmailを開けてみました。すると、ちゃんと日本語でメールが読めました。多分、文字表示にUnicodeという、多言語処理を意識して作られた仕組みを使っており、英語や日本語以外の言語であっても表示できるのでしょう。

 もっとも、ニューヨークタイムズによると、iPhoneはよい点ばかりではありません。iPhoneをアクティブにする作業は結構厄介なようです。まず、自分のパソコンをAT&Tのサイトにつなぎ、必要なソフトをいったんパソコンにダウンロードし、それからiPhoneに移さなければならないので、ITリテラシーの比較的高いアメリカ人でも戸惑った人が多かったと言われています。しかも、iPhoneを買った人達が一斉にAT&Tへ接続しようとしたのか、なかなかつながらなず、徹夜をしてようやくアクティブにした人もいたようです。

 iPhoneに対抗する製品が競合他社から発表されます。Samsungは今年の暮れにUltraSmart F700を出すそうです。これもiPhone同様、タッチスクリーンでコントロールできるそうです。LGは既にイタリアで同様のものを売り出したと発表しています。韓国勢は、iPodを軽視して失敗したSonyの二の舞にならないように気をつけているようです。Nokiaはaeonと言う新製品を、Sony EricssonはW960iを、それぞれ発表していますが、発売時期は未定です。

 MotorolaはRAZRの後継機であるRAZR2をこの7月にも発売します。これは格段に機能アップしており、LynxOSとフルスケールのウェブブラウザを搭載するそうですから、ちょっと楽しみです。携帯電話の世界も高級機についてはパソコンと同様、Apple、LynxOS、Microsoftと3種類の基本ソフトの闘いになってきました。