富士ゼロックスの文書管理ソフト「DocuWorks」は2007年5月、国内の累計出荷本数が200万ライセンスを突破した。業務システムとの連携による全社の文書閲覧・操作環境として、さらなる拡販を狙う。

 「直感的な使いやすさや軽快な操作感で、当初は企業内個人の利用が広がった。最近では日本版SOX法などへの対応に取り組むユーザー企業が、全社一括導入するケースが増えている」。富士ゼロックスの柳瀬努オフィスプロダクト事業本部システム開発部部長は、「DocuWorks」の販売の好調ぶりをこう説明する。1998年9月の発売以来着実に売り上げを伸ばし、2004年度以降は年間30万本を超える販売を達成している。

 DocuWorksは、パソコンで作成したオフィス文書などの電子文書と、複合機やスキャナーなどで取り込んだ紙文書を、一つのインタフェースを使って保管、編集、回覧できるクライアント用の文書管理ソフト(図1)。サーバーで文書ファイルを共有する仕組みを提供する文書管理システムは数多くあるが、DocuWorksは、エンドユーザー個人の文書管理や閲覧を支援する数少ない製品である。

図1●さまざまなフォーマットの文書ファイルやスキャンした紙文書のデータをDocuWorks上で総合管理する
図1●さまざまなフォーマットの文書ファイルやスキャンした紙文書のデータをDocuWorks上で総合管理する

PDFとは競合しない

 文書ファイルやスキャンした紙文書のデータを、「DocuWorks文書」と呼ぶ独自のフォーマットに変換して保存する。変換したDocuWorks文書に元の文書ファイルを添付して保存できるほか、複数のDocuWorks文書を束ねたり、文書のページ内にコメントや注釈を書き込んだりすることも容易にできる。

 柳瀬部長は「紙と同じ操作性をパソコン上で実現することで、エンドユーザーは文書管理業務を大幅に効率化できる」と説明する。また、エンドユーザー個人の利用だけでなく、社内の文書回覧などに利用することも可能だ。

 文書データの共通フォーマットはPDFが標準で、アドビシステムズのAcrobatなどPDF文書を扱うためのツールもある。だが柳瀬部長は「DocuWorksは、国産ソフトならではのきめ細かな扱いやすさが評価されている。ITリテラシーの低いエンドユーザーでも手軽に感覚的に使える」と強みを説明する。また、「DocuWorksはデスクトップの操作環境を提供するもので、ファイルフォーマットであるPDFとはそもそも競合しない」(同)と言う。DocuWorksでPDFファイルを管理することもできる。

 こうした使い勝手が“企業内個人”に受け入れられたDocuWorksだが、その拡販を後押ししたのがセキュリティニーズの高まり。DocuWorksは、パスワードや電子証明書による操作制限機能を備えるほか、オプション製品の「DocuWorks Context Service」を使えば、社内のネットワーク内でのみ文書を閲覧できるようにして、情報漏えいを防ぐことも可能だ。

他社製アプリとの連携に注力

 日本版SOX法が求める内部統制の整備に向けて、ユーザー企業は文書の閲覧・編集権限、保管や廃棄などをルール化、標準化して管理を厳格化しなければならなくなっている。紙文書の電子化の要求も高い。そのため現在、富士ゼロックスが注力しているのはDocuWorks単体での利用だけではなく、サーバー型の文書管理システムやセキュリティソフトなどと連携した、全社的な文書管理基盤としてのソリューションの拡販である(図2)。

図2●複合機や他社製アプリケーションと組み合わせたソリューションの販売を推進
図2●複合機や他社製アプリケーションと組み合わせたソリューションの販売を推進
ソリューションプロバイダは、自社が扱うアプリケーションとDocuWorksを連携するシステムを開発できる

 DocuWorksと連携するサーバーアプリケーションは、富士ゼロックス自身も文書管理システムの「ArcWizShare」などを提供している。ただし「自社製品だけの展開には限界がある」(柳瀬部長)。このため、DocuWorksは富士ゼロックスが直販するが、DocuWorksを他の製品と組み合わせたソリューションの提供では、協業を推進している。

 具体的には、ISV(独立系ソフトベンダー)やソリューションプロバイダなど、他社のアプリケーションと連携するソリューションの品ぞろえ強化に力を入れており、既に100製品以上がDocuWorksとの連携に対応しているという。柳瀬部長は「クライアント側にDocuWorksを使うことで、ソリューションプロバイダは自社のサーバーソリューションの付加価値を高めることができる」と、協業のメリットを強調する。

 連携するアプリケーションは、文書共有ソフトやセキュリティソフトのほか、検索ソフトやナレッジマネジメント、建設業向けの台帳管理ソフトなどさまざま。例えば日本システムウエアが提供する「どっくあっと」は、Webブラウザーを使って文書の登録、検索、閲覧が可能な文書管理システムで、文書の閲覧にDocuWorksを使う。セキュリティ関連では、日立ソフトウェアエンジニアリングが提供する「秘文」とも連携できる。

 連携アプリケーションの開発を支援するために、DocuWorksのAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)を公開し、開発キット「DocuWorks Development Tool Kit」を無償提供している。また、開発者向けの有償サポートプログラムも用意。連携ソリューションを開発する際の技術支援や検証スペースなどを提供する。特定のシステム開発案件の支援も強化していく。

 富士ゼロックスは今後、DocuWorksと連携するソリューションを提供するソリューションプロバイダとの協業強化をテコに、DocuWorksを年間60万本販売する計画を立てている。