FONを一般的な公衆無線LANサービスと比べると,ビジネスモデルとネットワーク構成の両面で違いがある。その違いを理解することで,FONを利用する上での注意点が見えてくる。ポイントとなるのは,(1)専用AP「La Fonera」(ラフォネラ)の機能,(2)APでの認証手順,(3)セキュリティ上の注意点,(4)踏み台対策──の4点だ。連載の第3回と4回では,これらの項目ごとに,FONの仕組みを徹底解剖していく。

ポイント(1)専用AP「La Fonera」の機能

 FONに対応する無線LAN AP「La Fonera」は,1980円という安さながら,FONのサービスを成立させるための数々の特徴的な機能を持つ(図1)。FONのサービスの肝とも言える存在だ。

図1●FON専用AP「La Fonera」の特徴
図1●FON専用AP「La Fonera」の特徴
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 ユーザーはLa Foneraを購入後,それを自宅のブロードバンド・ルーターやADSLモデムに接続し,インターネットに接続できる環境を作る。次にLa FoneraをFONのサーバーへ登録する。具体的には,La Foneraの無線LANに最初にアクセスすると,FONのサーバーに自動接続し,登録画面を表示する。

 La Foneraの登録が完了するとLa Foneraの所有者のIDの権限が変わり,他のユーザーが開放するAPへ無償でアクセスできるようになる。

APはサーバー経由で設定

 La Foneraは,無線LAN APとして必要なESS-IDなどの設定項目を,FONの Webサーバー上で設定する仕組みだ。La Foneraの電源を入れ直すこ とでサーバーの内容が即時に本体に反映される。何もしなくても,2~3 時間程度のタイムラグで本体の設定が書き換わる。これによってフォン は各ユーザーのLa Foneraを集中管理している。

 またFONのサーバーは,La Foneraの状態を逐次チェックし,本体のファームウエアをインターネット越しに自動更新する。サーバー側に設定を保存することで,ファームウエアの更新によって本体設定が消されてしまう事態を防いでいる。

 一方でLa Fonera側も,定期的にFONのサーバーへと信号を送り,ネットワーク接続が可能な状態かどうかをサーバーに報告している。この情報がFONの地図サービスに反映される。

 La Foneraが1週間以上ネット接続できない状態になっていると,フォンはLa Foneraの所有者に対して警告メールを送信する。オフライン状態が1カ月続くと,他人のAPの利用など,FONのサービスを一時的に停止するケースもあるという。

異なる二つのESS-IDを送信する

 La Foneraは,公開用とプライベート用の2種類のESS-IDを送信する。初期設定では公開用のESS-IDは「FON_AP」,プライベート用のESS-IDは「MyPlace」となっている。公開用とプライベート用の二つのESS-IDの送信は,「タイム・シェアリングによって仮想的に無線LAN機能を二つに分けることで実現している」(フォン・ジャパン)。

 プライベート用の設定は,La Foneraのプライベート・アドレス(初期設定では192.168.10.1)に直接アクセスすることでも可能だ。

 La Foneraは,PPPoE接続機能やポートフォワードなど,ルーターとしての必要最低限の機能を備えている。ただしフレッツ・スクエアとプロバイダの同時接続を可能にするようなPPPoEマルチセッション機能には対応していない。

 なお市販のルーターにFON対応のファームウエアをインストールすることで,La Foneraと同様の機能を実現できる。対応するのは米リンクシス製のルーターなど数機種。FONのWebページ上にファームウエアが公開されている。

ポイント(2)APでの認証手順

 FONでは,La Foneraの所有者のインフラを利用するため,一般的な公衆無線LANサービスとはネットワーク構成が少し異なる。FONでは,La Foneraの所有者が加入するプロバイダ網を経由してインターネット接続する。それに対して,一般的な公衆無線LANサービスは,サービス提供事業者が回線からプロバイダ機能まで一括して用意することが多い。

 ただ基本的な認証手順は,両者の間でほとんど違いはない(図2)。FONのサービスを利用するには,外出先などでFONの公開用APである「FON_AP」などを探し出してアクセスする。アクセス後,Webブラウザを立ち上げると,強制的にFONのログイン画面が表示されるので,そこにIDとパスワードを入力。認証が完了すると,プロバイダ網を経てインターネットへアクセス可能になる。なおブラウザを持たない無線LAN搭載の家電機器などでは,ID情報を端末に埋め込むことで認証可能になる。

図2●FONの認証とインターネットへのアクセス手順
図2●FONの認証とインターネットへのアクセス手順
一般的な公衆無線LANサービスとはネットワーク構成が異なるが,基本的な認証手順はほぼ同じ。認証後はLa Foneraを設置したユーザーが加入するプロバイダの網からインターネットへと抜ける形になる。
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 ちなみにフォンは,APに接続したユーザーの利用履歴をサーバー上で収集している。収集している情報は「接続した時間,接続先のAP名,通信量など」(フォン・ジャパン)。情報収集の目的は,FON経由で不正アクセスがあった際の対応のためという。フォンが収集している情報は,La Foneraの所有者やFONの利用者から閲覧可能だ。

出典:日経コミュニケーション 2007年6月15日号 46ページより
(記事は2007年6月末時点の情報を追加したものです。現在では異なる場合があります)