■今回から週1回の連載で、中小ソフトハウスの経営者の方を対象に、伸びるソフト会社が共通して持っている条件についてお話させていただきます。

(長島 淳治=船井総合研究所 戦略コンサルティング部)



「長島さん、どうしてもこれ以上、売り上げが伸びないんです」
経営相談を受けていると、なぜか共通して停滞する“いわゆる”壁があります。

【年商3億円 ⇒ 年商7億円 ⇒ 年商10億円 ⇒ 年商30億円】

実は、この年商規模の前後で、なぜか成長が鈍化したり、売り上げが戻ってしまったりと不思議な現象が起きています。特に年商3億円の壁は、ソフトハウスが最初にぶち当たる大きな壁となります。

経営者は、年商3億円の分岐点を知らずに、さらに上を目指して努力を重ねます。年商3億円企業が次に目指すのは年商10億円です。ところが、そんな目標を立てたのにもかかわらず、3億円前後でうろうろします。さらに、社内外においていろんな問題が発生してきます。例えば、こんな感じです。

-赤字プロジェクトが増えるなど、利益率が低下してくる
-社員が外部から引き抜かれるなど、離職率が高まってくる
-鬱の社員が出てくるなど、会社の雰囲気が暗くなってくる
-優秀な幹部クラスが辞めるなど、組織設計が困難になってくる
-営業案件の失注率が上昇するなど、売り上げ不振となってくる
-新規事業を展開したが、不採算事業となり赤字だけが残った

いかがですか。これらの項目の中に『あれっ』と感じるものはありませんでしたか? もしも一つでも当てはまるのであれば要注意です。恐らく年商3億円の壁にぶつかっています。

「長島さん。でも、うちの会社は今年、年商4億円近くまで売り上げたよ」
こんな話をされる経営者もいらっしゃいます。

実はここに大きな分かれ道が待っています。もしも年商3億円の壁を意識して対策を打っているのなら、そのまま年商10億円まで目指せる会社になるでしょう。ところが、その壁に気付いていなければ、やっぱり年商は逆戻り、年商3億円以下になるでしょう。

それでは、年商3億円の壁って一体何でしょうか?

成長の壁の原因は経営者にあり!

例えば、私がこんな質問をしたとします。
『資金繰りを担当しているのは誰ですか? 営業を統括しているのは誰ですか? プロジェクトがトラブルに陥ったとき、対応しているのは誰ですか? 社内の事務処理の多くを担当しているのは誰ですか?』

すべて「私」と答えた経営者のあなた。

実はそれが成長の壁の原因なのです。実は年商3億円までの会社は、経営者個人の会社いわゆる“家業”のレベルです。つまり経営者個人の力量で伸ばせる範囲であれば、成長することは可能です。ところが、経営者の能力の限界を超えて仕事量が増えてくるのが、年商3億円前後からです。すると、経営者が一つひとつにかけられる時間が少なくなります。

すると、「品質が悪くなる」「スピードが落ちてくる」「社員と向き合う時間が減る」、つまりお客様とのリレーションも、社内に対するマネジメントもすべて中途半端になり、経営者が一人で対応できる範囲内の仕事量にまで、規模が修正されていくのです。

こうした売り上げの傾向は、見事なまでに現れます。今は年商15億円を超えたソフトハウスの事例ですが、この企業の創業から今までの売上高推移を見せて頂きました。すると面白いように、年商3億円前後の壁が4期連続でありました。

その壁を超えると年商10億円前後まで成長するのですが、やはり年商10億円の壁が4期ほど続いていたのです。この事実を見て、経営者も驚いていました。それでは年商3億円を突破するためには、どうすれば良いのでしょうか? これには以下のような打ち手があります。

1.経営者自身が年商10億円企業を目指すと決めること
2.幹部社員を育てること
3.ビジネスモデルを構築すること
4.幹部社員に役割と権限を委譲すること

次回から、この4つの打ち手について、まずは経営者が持つべきマインドの部分を中心にお話させていただきます。


著者プロフィール
1998年、桃山学院大学経営学部卒業。某大手SIerでの営業を経て、船井総合研究所に入社。以来、年商30億円未満のソフトハウスを専門にコンサルティング活動を行う。「経営者を元気にする」をモットーに経営計画作り、マーケティング支援、組織活性化のため全国を飛び回っている。毎週1回メルマガ『ソフトハウスのための幸福経営論』を発行。無料小冊子『ソフトハウスが元気になる30の法則!』も発刊。