携帯電話端末のアンテナは3本立っているのに,電話がつながらない---。こんな経験をされたことはありませんか? 実はあのアンテナ表示は,電話やデータ通信のつながりやすさを表しているわけではありません。

携帯電話はなぜつながるのか
紹介した内容については,書籍『携帯電話はなぜつながるのか』(日経BP社)で詳しく解説しています。ぜひ,そちらもご覧ください。

 携帯電話端末のアンテナ表示は,電波の強さを表しています。「電波の強さとつながりやすさは同じじゃないの?」「電波が強いのにつながらないなんておかしいじゃない!」という声が聞こえてきそうですが,そこが無線通信の難しいところです。複数の無線基地局から強い電波が携帯電話端末に届いていると,お互いに影響を及ぼし合って,どちらの情報もうまく受信できなくなってしまいます。

 この現象は,高層ビルなどで起こりがちです。無線基地局は地上の比較的高い位置にある場合が多いので,高層ビルの上層階からは広い範囲の無線基地局を見通せます。障害物がないので,いくつもの無線基地局から電波が直接届きます。複数の無線基地局から強い電波が届くと,影響を及ぼし合って干渉してしまいます。

 ところが,携帯電話端末のアンテナ表示は,単に電波の強さです。一つの無線基地局からの電波が強い場合でも,複数の無線基地局からの電波が強い場合でも,携帯電話端末のアンテナの表示は同じ3本になります。ユーザーには,「アンテナ3本だからつながりやすい」と見えますが,複数の無線基地局から強い電波が届いている場合はつながりにくいのです。このため,高層ビルなどの中には屋内に無線基地局を設置して,つながりやすくしているケースもあります。