こんな経験をされたことはありませんか?

 携帯電話で電話をかけると,「プーッ,プーッ」という音が聞こえます。いったん電話を切ってすぐにかけ直してみると,今度はちゃんとつながります。「今,誰かと電話していた? お話し中だったよ」と聞くと,「いや,電話なんてしないよ」という答が返ってきました。相手がウソをついているのではないだろうか---。

 でも,相手がウソをついているとは限りません。相手がお話し中でなくても「プーッ,プーッ」音が聞こえる場合があるのです。それは固定電話でも携帯電話でも同じです。

携帯電話はなぜつながるのか
紹介した内容については,書籍『携帯電話はなぜつながるのか』(日経BP社)で詳しく解説しています。ぜひ,そちらもご覧ください。

 どんな時に「プーッ,プーッ」音が鳴るかというと,お話し中はもちろんですが,電話をつなぐ電波や回線に余裕がない時も鳴ります。携帯電話端末と無線基地局の間は電波でつなぎますが,一つの無線基地局のエリア(セル)内で同時に電波を出して通信できる人数には限りがあります。第3世代携帯電話のW-CDMA方式の場合,同時に利用できる人数は電話だけなら数十人程度,データ通信は通信速度によって変わりますが384kビット/秒なら数人程度です。

 つまり,上限ぎりぎりの数の人が通信しているセル内では,新たに電話をかけようとしても通信できません。この時に交換機が携帯電話端末に向けて,「プーッ,プーッ」というお話し中の音を流すのです。交換機の処理能力が上限に達している時,交換機同士を結ぶ回線を確保できない時,制御情報を送る回線に余裕がない時なども,交換機がお話し中の音を流します。

 同じように固定電話でも,年末年始や災害発生時につながりにくくなると,相手が話しをしていなくてもお話し中の音を流すことがあります。ただ,電波を使う携帯電話の方が固定電話よりも,お話し中の音が流れるように感じるかもしれません。