インターネット動画配信と言えば、ユーチューブの名前が挙がる。グーグルが買収したことで、ユーチューブの名前はますます有名になった。しかし、米国のメディア業界においては、ルクセンブルグにあるジュースト(Joost)が注目されている。同社はこの1月に設立されたばかりのベンチャー企業である。

 ジューストは、社名と同じJoostと呼ぶ、動画配信システムを持つ。Joostを利用しようと、CBSやパラマウントピクチャーズを擁するメディア大手のバイアコムはジューストと提携した。バイアコムは3月に、ユーチューブを著作権侵害で訴えており、「ユーチューブを見限り、Joostに賭けた」格好だ。

 ITproの中田敦記者は先頃、米国取材を行い、Joostがネット動画配信の台風の目になると実感したという。中田記者のレポート「P2P動画配信のJoostが台風の目に」、「オープンソースのP2P映像配信システムJoostを披露」を基に、なぜJoostが注目されているかを探ってみよう。

Joostが目指す「TV 2.0」

 ジューストは起業当初から、バイアコムのようなコンテンツ・ホルダーと、放送に広告を出す企業との関係作りを進めてきた。Joostで配信されるのは、Joostと提携するコンテンツ・ホルダーが作成した「番組」だけである。利用者が投稿したコンテンツや販促ビデオが中心のユーチューブとは決定的に異なる。ユーチューブが「利用者作成コンテンツ」という新しいコンテンツの配信を指向しているのに対して、Joostは既存の「テレビ放送」を強く指向している。

 Joostの「テレビ指向」という姿勢が端的に表れていたのが、4月末に米国サンフランシスコで開催された「ad:tech」におけるJoostの基調講演だった。一般企業の宣伝部門担当者や広告代理店が多く集まる「ad:tech」で、ジューストの幹部が1時間に及ぶ基調講演を行った。ad:techの1週間前に開催された「Web 2.0 Expo」では、Joostは「基調講演の間に10分だけデモンストレーションができる」新興企業として扱われていたのと好対照であった。