半導体大手のルネサス テクノロジは,情報システムの運用と保守を,世界規模でアウトソーシングする計画を推進している。

 同社は,2003年4月に日立製作所と三菱電機の半導体事業部門を統合して誕生した。もともと両社は,欧州やアジアなどに生産・販売拠点を構えていたが,ルネサス テクノロジの設立にあたり,地域ごとに両社の拠点の基幹系システムを統合することを決めた。しかし,統合作業は難航。当初予定より4カ月遅れの2006年1月に,ようやく基幹系システムの統合が一通り完了した。

 経営企画本部IT戦略企画部の三和智部長は,「当初は二重になっていたサプライチェーンがようやく一つになった。次のステップとして今注力しているのは,IT部門の運用・保守業務を効率化することだ」と明かす。世界の各拠点で個別にシステムを運用・保守するのではなく,拠点をまたいだ共同化やアウトソーシングを進める。これにより「余裕ができた予算や人的リソースは,新システムの企画や開発に生かす」(三和部長)つもりだ。

ガバナンス専門チームが共同化と外部委託を主導

 「BPRプロジェクト」――。これが,ルネサス テクノロジが現在進めているプロジェクトの名称である。

 このプロジェクトのミッションは三つある。(1)SAPのERPパッケージで開発した基幹系システムの共同化,(2)運用・保守業務の外部への業務委託,そして(3)2006年1月に完了したシステム統合プロジェクトで積み残しになったシステム開発,だ。

 会社設立時からの懸案だったシステム統合プロジェクトは,2006年1月に終了したものの,「当初予定していた事案のうち,完了しなかったものが10くらい残った」(三和部長)。

 例えば,原価計算のシステムは新システムに移行できていない。三和部長はその理由を,「当社には製造工程が400近くあり,扱う品種は400万を超える。移行を検討したが,SAPのパッケージでは実装が難しいと判断した」と説明する。これらは個別にオープン系システムとして新たに構築することを決めた。

 この積み残し分の開発と,共同化やアウトソーシングにメドを付けるのが,2006年4月に始動したBPRプロジェクトの役割だ。共同化やアウトソーシングの指揮を執るのは,IT戦略企画部の中に設けられた,ガバナンス・チーム16人である(図1)。取り組みがバラバラにならないようにするため,このチームは全体戦略の策定と意思決定に専念する。そして,各国の現地法人の情報システム関連予算を決定し,システム構築計画を立てる。このチームの指揮下で実働部隊となるのが,アクセンチュア,および,ルネサス テクノロジとアクセンチュアとの合弁会社「ルナセンティス情報サービス」である。

図1●ルネサス テクノロジは,意思決定の責任を明確にするため,世界戦略を統括するガバナンス・チームを情報システム部門の中で立ち上げた
図1●ルネサス テクノロジは,意思決定の責任を明確にするため,世界戦略を統括するガバナンス・チームを情報システム部門の中で立ち上げた
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 三つのミッションのうち,(3)積み残しの開発については,ガバナンス・チームとは別組織であるBPR推進部のメンバーが,すでに着手している。08年10月までに開発を完了する予定だ。