米国では現在,リコーの現地法人が長年取り組んできた販売系システムの刷新プロジェクトが佳境を迎えている。同社は1980~90年代に,米国企業の買収を繰り返して規模を拡大してきた結果,社内に複数の販売系システムが乱立するという状態が続いていた。リコーはこの状況を打開するためにシステムを一本化し,米国法人を“ワンカンパニ,ワンシステム”にしようとしているのである。

 新販売系システムは,米オラクルのERPパッケージ「Oracle E-Business Suite(EBS)」を使って新たに構築。昨年1月には,プリンタや複合機などの直販業務を支援する機能をリリースした。今年9月には,代理店による間接販売にも対応する予定である。こうしてリコーの米国法人は,社内に複数あった販売系システムから,単一の新システムに全面移行する。

 一方,国ごとに販売管理システムが稼働している欧州でも,「各国のシステムを統合する計画を立て,現在,Oracle EBSをベースに新システムを開発している最中だ」(リコー IT/S本部の鈴木敏廣 IT/S企画室長)。国をまたいで,各現地法人が新システムを共同利用する方式だ。欧州22カ国の現地法人から担当者が集まって新システムの要件をまとめ,すでに開発に着手している。07年11月に,まず英国法人が利用を開始する予定である。

 もちろん,22カ国ともなると要件の違いは小さくない。そこで“階層的”に要件を定義する方法を採っている。まず,欧州各国に共通する要件を定義し,その要件で不足するものだけを国別の要件として取りまとめ,機能を追加開発する。こうした工夫により,国をまたいだシステム統合を成功させようとしている。

狙いはサプライチェーンの最適化

 リコーが米国や欧州でシステム統合を推進するうえで,重要なカギとなるのが標準化だ。システムの種類によってアプローチは異なるが,業務アプリケーションからITインフラまで,徹底してシステムの標準化を進めている(図1)。

図1●標準化を進めるリコーだが,販売管理システムについては,世界5極ごとに統合化する方針を採っている
図1●標準化を進めるリコーだが,販売管理システムについては,世界5極ごとに統合化する方針を採っている
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 生産管理システムや物流管理システムについては,日本の情報システム部門であるIT/S本部の主導で世界共通のシステムを開発し,これを各国の現地法人に展開する。一方,これまで法人ごとにバラバラだった販売系システムは,米国,欧州など5つの地域(極)ごとに標準化の方針を策定し,新システムを構築する。プロジェクトをとりまとめるのは,各地域の統括会社にある情報システム部門である。

 リコーが標準化をここまで徹底する狙いは何か。