「今や当社製品の7割は欧米向けだ。欧州各国や米国の各地域で事業を展開する中で,情報システムのグローバル化にも継続的に取り組んできた」---。

 こう話すのは,コニカミノルタ ホールディングスの大久保寛IT業務改革部長である。同社は2003年8月の旧コニカと旧ミノルタの経営統合に伴い,約2年をかけ世界の各拠点でコニカ系とミノルタ系の基幹系システムを統合してきた。さらに2005年2月からは,欧州や米国など地域ごとにシステムを共同化するプロジェクトを進行中だ。

 コニカミノルタ ホールディングスは,連結子会社だけでも全世界に120社を持つグローバル・カンパニーである。2006年にデジカメやフィルムなどを扱うフォトイメージ事業の終了を発表する一方,中核となる複合機やプリンタを扱う情報機器事業の世界展開に力を入れている。

 その生産拠点のほとんどが,今や中国や東南アジアにある(写真1)。売上比率も,日本より欧米地域のほうが高い。コニカミノルタにとってのビジネスの主戦場は,日本から海外に移り始めているのだ。

写真1●コニカミノルタの複写機・プリンタ事業では,製品のほとんどを海外で生産している
写真1●コニカミノルタの複写機・プリンタ事業では,製品のほとんどを海外で生産している(写真は中国にある現地法人の生産工場)

SAPのERPパッケージをベースに世界各国でシステム統合

 コニカとミノルタが経営統合を発表した直後の2003年2月に,コニカミノルタの情報システムのグローバル戦略は,その歩みを始めたといっていい(図1)。経営統合に当たって,歴史の異なる両社の様々な情報システムをどのように統合し,運用していくのか。その方針を日本から各国に向けて打ち出した。

図1●システム統合にメドを付けたコニカミノルタは,2005年に着手したシステム共同化を今後もさらに推進する
図1●システム統合にメドを付けたコニカミノルタは,2005年に着手したシステム共同化を今後もさらに推進する

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 その内容は「SAPのERP(統合基幹業務システム)パッケージをベースに,各国ごとに両社の現地法人のシステムを統合する」というもの。コニカもミノルタも,日欧米を中心に,生産拠点や販売拠点を各国に持っていた。それぞれの国内で,これらの拠点を一つの法人として統合すると同時に,各国で個別に構築・運用していた情報システムも統合する。

 この方針について,IT業務改革部の茶谷勉マネージャーは「旧ミノルタの情報システム部門は,各国の基幹系システムをSAP R/3(当時のERP製品の名称。現在はSAP ERP)にそろえる取り組みを始めていたこともあり,SAP製品を使う現地法人が多かった。そこでSAPに“寄せる”方針を採った」と明かす。「基本方針をまとめたあと,それこそ世界中の担当者に説明して回らなくてはならず,一苦労だった」(茶谷マネージャー)という。03年4月には,各国でプロジェクト・チームが立ち上がり,実作業が始まった。

 もちろん,システム統合作業の内容や手順についても指針を示した。例えば2004年4月には,それまで各国の法人ごとにバラバラだった製品コードを全世界で共通化することを決定。新たに発売する製品については世界統一の新コードを付与し,法人によって異なる既存の製品コードと併存させることにした。製品が入れ替わっていけば,徐々に新コードで扱う製品の割合が増し,国や法人をまたいだデータ連携がしやすくなる。