会議の進行方法のひとつに「ブレインストーミング」があります。話の結論を求めずに,複数人でアイデアをどんどん出していきます。ブレインストーミングのポイントは,決して他人の意見を否定しないで,突拍子もない奇抜なアイデアを歓迎しながら,テーマ(目的)の周辺を全員参加で探索することです。

 このような発散系のミーティングには,マインドマップとホワイトボードが非常に適しています。マインドマップが参加者の脳に対する視覚的入力となり,脳をさらに刺激し,どんどんアイデアが膨らみます。

 やり方は,特に難しくありません。まず,ファシリテーターは最初に目的と背景,終了予定時刻,そしてグランドルール(進め方のルール)を参加者に伝えます。つまり,以下の4点に注意しながら議論を進めることです。

  • 決して,他人の意見を否定しないこと
  • 奇抜なアイデアを歓迎すること
  • まとめる(結論を出す)ことを意識しないこと
  • 質より量を出すこと(量がブレインストーミングの質である)

 その後は,フリーに議論開始です。ただし,30分から1時間を一区切りの目安とするほうがよいでしょう。必要であれば,休憩をはさんで続けます。

 ブレインストーミングの最中,書記もしくはファシリテーターがマインドマップでメモをとります。ホワイトボードにメモをとってもよいですし, 前回の議事録のように,マインドマップ・ソフトウエアを使ってプロジェクタで壁に映しながらとってもかまいません。とにかく,アイデアがみんなの目に見え,それが次のアイデアを誘発するようにします。

 図6はホワイトボードにマインドマップを描いて行ったブレインストーミングです。中央に,「モデコンKPT」とあります。これは,オブジェクト倶楽部主催の「モデリングコンテスト」というイベントの「ふりかえり」をしている例となっています。「ふりかえり」とは反省会のようなものです。KEEP(続けたいこと,図6右上),PROBLEM(問題点,図6左),TRY(次回試してみたいこと,図6右下)の3視点から,過去の自分たちの活動を自分たちで振り返って次回を改善する活動です。

図6●ブレインストーミングのマインドマップ例(協力:オブジェクト倶楽部)
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 もうひとつ例をお見せしましょう。図7は,新入社員が現場に配属になる前に,「どんなエンジニアになりたいか」という話題でグループ・マインドマップを描いた例です。このマインドマップは字の向きがいろいろです。テーブルに模造紙を広げ,それを囲んで全員で同時に描き込んだためにこういう作品になりました。これもひとつのスタイルです。

図7●チーム作りのためのグループ・マインドマップ例(協力:永和システムマネジメント)
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 このホワイトボードやフリップチャートを観察すると,各自から出てくる意見が,お互いに触発されて,どんどん広がっている様子がわかると思います。マインドマップを使ってブレインストーミングをする利点は以下の通りです。

  • 議論が「見える」ので他人の意見に触発される
  • マインドマップの放射形状が発想を活発にする
  • 必要であれば同時並行に複数人が描き出していける
  • 議論の全体像を俯瞰できる(一覧性)
  • あとでマインドマップを見ると議論の場面を思い出せる(プレイバック効果)

※本記事のマインドマップ(手書きを除く)には,株式会社チェンジビジョンのJUDE/Think!とJUDE/Professionalを使っています。評価版は,下記のURLで入手できます。
http://jude.change-vision.com/jude-web/index.html

平鍋 健児(ひらなべ けんじ)
 株式会社チェンジビジョン代表取締役社長。株式会社永和システムマネジメント副社長。本連載の基になった『ソフトウエア開発に役立つマインドマップ チームからアイデアを引き出す図解・発想法』(2007年6月,日経BP社発行)を執筆した。