前回は,マインドマップを使った会議のファシリテーションについて紹介しました。特にプロジェクタに投影したマインドマップによって参加者の意識を会議の進行にひきつけ,結論と宿題をまとめることで会議を有意義なものにすることを目的としています。

 今回は,完成した議事録をお見せしましょう(図4)。この会議は,マインドマップの本(『ソフトウエア開発に役立つマインドマップ』)を書くために実際に行った企画会議です。第1回の図2で紹介した議事録テンプレートをそのまま使っています。

図4●マインドマップ議事録の例
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 会議が終わったら,議事ログのマインドマップから個条書きにして文章を補足したものを参加者にメールし,議事録とします。多くのマインドマップ・ソフトウエアは,マインドマップをテキスト・エディタやメーラーにコピー&ペーストすると,うまくインデントづけされたテキストになります(図5)。

図5●マインドマップ議事録をメールに貼り付けた例
マインドマップのツリー構造が,うまくインデントづけされた文章構造(見出しと個条書き)へと変換される。
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 BOI(中心から伸びる最初の枝)をうまく選ぶと,文章の先頭から,「日時」「参加者」「目的」「結論」「宿題」と並び,最後に「アジェンダ」の議論が付きます。このフォーマットは,そのまま簡便な議事録として通用します(必要であれば文章を補います)。会議中に使ったホワイトボードの絵などは,写真をとって,マインドマップに貼るとよいでしょう。そのマインドマップを,画像やPDFとして保存し,メールで参加者に送ることもできます。

 ただし,その場に参加していない人にいきなりマインドマップを送るのは避けましょう。マインドマップは,キーワードをつないだもので,コンテキスト(その場の臨場感)を枝の形や色で,参加者の記憶とともに保存しています。参加者はそのマインドマップを見ると,その場のことが思い出せ,キーワードだけでも自然にマインドマップを読めます(これはマインドマップの特徴のひとつである「プレイバック効果」です)。しかし,参加していなかった人は,その場のコンテキストを共有していません。参加していない人には,このマインドマップから作った個条書きに,文章を補足して議事録とした方がよいでしょう(これは,ひとつのマナーです)。

 では第1回,第2回のまとめとして,マインドマップをプロジェクタで映して会議を進め,それを議事録にすることの利点をまとめておきましょう。

  • 議論がそれたり,一部に集中したりすることを防ぐ
  • 議論が「見える」ので,他人の意見に触発されて議論が活発になる
  • 会議の最後に,結論と宿題を明確にすることをみんなに思い出させる
  • 会議中,議論の全体像を俯瞰できる(一覧性)
  • その場の議事録として合意できる
  • あとでマインドマップを見ると,その会議の場面が思い出せる(プレイバック効果)

※本記事のマインドマップ(手書きを除く)には,株式会社チェンジビジョンのJUDE/Think!とJUDE/Professionalを使っています。評価版は,下記のURLで入手できます。
http://jude.change-vision.com/jude-web/index.html

平鍋 健児(ひらなべ けんじ)
 株式会社チェンジビジョン代表取締役社長。株式会社永和システムマネジメント副社長。本連載の基になった『ソフトウエア開発に役立つマインドマップ チームからアイデアを引き出す図解・発想法』(2007年6月,日経BP社発行)を執筆した。