マインドマップの使い方を紹介する前に,まず,マインドマップが何かをお話しましょう。マインドマップ(Mind Map)は,英国のトニー・ブザン氏が開発したノート記述法であるとともに,発想法,さらには能力開発メソッドです。絵と言葉によって放射状に思考プロセスをまとめていきます。まずは見てもらうのが早いでしょう。

図1●マインドマップの例(プロジェクトのクリスマス企画)
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 図1は,「プロジェクトのクリスマス企画」を表現したマインドマップです。あるプロジェクトで,クリスマス近くに製品のβ版をリリースすることになりました。そこで,クリスマス会を兼ねて,顧客にも参加をお願いして懇親会をしたらどうかというアイデアが出ました。このマインドマップは,その企画をまとめたものです。

 どうですか? その色や形を印象的に感じたことと思います。この視覚的なインパクトが,マインドマップの大きな特徴です。

 まずテーマとなるタイトルを中心部に書きます。この例では,「Project X'mas」です。そして,できれば特徴的な絵を使って印象を強めます。これをセントラル・イメージ(Central Image)と呼びます。その周りに,枝を伸ばすように分岐を加えます。この枝をブランチ(Branch)と言います。中心から出る最初のブランチをBOI(Basic Ordering Idea)と呼びます。この例では,「When」(いつ?),「What」(何を?),「Why」(なぜ?),「Who」(誰が?),「Where」(どこで?),「Result」(結果は?)の6つがBOIです 。そのあとは,それぞれのブランチを展開する形で,トピック(キーワード)がさらに分岐しています。また,ところどころに小さな絵(アイコン)を入れることによって,ポイントをさらに強調しています。

 このような空間を使った表記法を使うと,内側から外側に向かってどんどん思考を広げていくことができます。逆に,複雑でごちゃごちゃしたものを,分類・整理して示すこともできます。

 このマインドマップには,以下のような特徴があります。

  1. プレイバック効果=思い出せること
    通常のドキュメントに比べて印象が強いため,これを描いた場面を思い出すことができます
  2. 一覧性=全体を見渡せること
    1枚にまとめることで,ぱっと全体を俯瞰することができます
  3. 速記性=すばやく記述できること
    単語をつなぐだけなので通常の文章よりも素早く描けます
  4. 容易性=技術者だけでなく誰でも描けること
    難しいルールはありません
  5. 半構造=構造を柔軟に変更できること
    テンプレートを作ることもできますし,描きながらテンプレートを変更することもできます。

議事録と会議ナビ

 マインドマップを使った会議の有効な進め方を紹介します。会議で大切なことは,最初に目的を全員で認識すること,必要なアウトプットを時間内に出すこと,そして結論を明確にし,その場で出た宿題は,誰がいつまでにやるかというアクションをアイテム化して合意することです。

 この会議の進行をスムーズにするために,マインドマップ・ソフトウエアを使って,リアルタイムに議事録をとります(私たちはこれを「議事ログ」と呼んでいます)。私たちが使うのは,図2のような会議用のマインドマップ・テンプレートです。

図2●議事録のマインドマップ・テンプレート例
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 会議が始まる前の準備として,「日時・場所」「参加者」「目的」「アジェンダ(議題)」のBOIを埋めておきます。これらの項目は,召集の案内時に出席者にメールしておくとよいでしょう。会議には必ず「目的」があります。会議の案内,および開始時にこれを明確にするかしないかで,会議のアウトプットの質がほぼ決まります。さらに,会議を印象づけるのに良いビジュアルがあれば,それをセントラル・イメージとして画像を貼り込みます。例えば,製品の企画会議なら製品のロゴや写真などがよいでしょう(図3)。

図3●会議でのリアルタイム議事録
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 会議が始まったら,このマインドマップをプロジェクタで会議室の壁に映しながら,その場で議事録をとっていきます。会議のファシリテーター(司会者)は,目的を確認したあと,アジェンダの詳細に入っていきます。アジェンダの中で議論になった部分については,マインドマップの枝を追加して,どんどん深くメモをとっていきます。マインドマップは速記性が高く,また途中で枝の構造を変更できるので,議論を簡便にその場でまとめることができます。

 また,全体構造が見えるので,議論の中で迷子になってしまうことを防ぎます。他人の意見も文字として書き出されるので,それについての自分の意見も出しやすくなります。うまいファシリテーターは,全員の意識を投影されているマインドマップにうまく導き,1つの枝葉末節に時間を使いすぎたりしないよう,会議の脱線に気をくばります。

 会議の終了時刻近くになったら,ファシリテーターは議論をまとめて会議の「結論」を作ります。結論は複数あってかまいませんが,「目的」と呼応していなければなりません。そして,会議の途中で出た宿題については,「誰が」と「いつまでに」やるのかを,その場で明確にしてしまいましょう。


※本記事のマインドマップ(手書きを除く)には,株式会社チェンジビジョンのJUDE/Think!とJUDE/Professionalを使っています。評価版は,下記のURLで入手できます。
http://jude.change-vision.com/jude-web/index.html

平鍋 健児(ひらなべ けんじ)
 株式会社チェンジビジョン代表取締役社長。株式会社永和システムマネジメント副社長。本連載の基になった『ソフトウエア開発に役立つマインドマップ チームからアイデアを引き出す図解・発想法』(2007年6月,日経BP社発行)を執筆した。