◆今回の注目NEWS◆

◎社保庁システム費累計1兆4千億、開発企業に天下り15人(YOMIURI ONLINE、6月15日)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070614i316.htm

【ニュースの概要】読売新聞は、社会保険庁のシステムに累計約1兆4000億円の費用を投入したこと、システムの開発などに携わった2社とその関連企業への天下りがあったことを報じた。


◆このNEWSのツボ◆

 年金記録の5000万件行方不明問題が大きな政治問題化し、参院選の焦点になりそうな状況下で、社会保険関係のシステムに投じられてきた膨大なシステム費用も、問題になり始めている。

 社会保険庁関係システムの膨大な年間コスト(年間1000億円を超えるともいわれている)は、かねてより政府のシステム調達改革の中で問題として取り上げられ、社会保険庁もこれを改革するための方針などを作成し、公表してきた。

◎社会保険業務に係る業務・システムの見直し方針について
http://www.sia.go.jp/topics/2005/n0630.htm

 それでも、正直に言えば「年間1000億円のシステム」とは、どのようなものか想像が難しいことも事実だ。今日、社会インフラとなっているようなシステムは、必ずしも公的なものだけではない。メガバンクや全国をカバーする流通企業のシステムは、毎日利用され、これが一日に処理するデータの量も膨大である。それがストップした時の影響も、殆どリアルタイムで稼働しているシステムであるため、ある意味、年金システムよりも影響が大きいとも言える。

 年金システムの「巨大さ」を表す数値として、全体で2000万ステップを超える…といった数字がしばしば引用される。

◎社会保険オンラインシステム刷新可能性調査
http://www.sia.go.jp/topics/2005/h0331.html

 しかし、最新の電子制御された高級車の組み込みソフトは車1台あたり600万~1000万ステップに達するとも言われており、全国をカバーするような小売業者や金融機関のシステムでも、おそらく社保庁システムと同等かそれ以上の規模を持っていると推定される。規模において社保庁のシステムだけが図抜けているわけではないようだ。にもかかわらず、年間費用が1000億円に達するようなシステムの話は、あまり聞いたことがない…。

 今回は、とりあえず行方不明になっている5000万件のデータ突合を集中的に行うようだが、結局、このコストも一般財源からの負担で行われるようだ。しかし、これまでの情報システムを含む年金行政全体の無駄遣い・高コスト構造を放置したままで、一般に負担を求めることはいつまでも許されるものではないのではないだろうか。

安延氏写真

安延申(やすのべ・しん)

通商産業省(現 経済産業省)に勤務後、コンサルティング会社ヤス・クリエイトを興す。現在はフューチャーアーキテクト社長/COO、スタンフォード日本センター理事など、政策支援から経営やIT戦略のコンサルティングまで幅広い領域で活動する。