以前にも書いたが,現在さまざまな家電がLinuxをOSとして採用している。国内主要メーカーの薄型テレビはほぼすべて,携帯電話にも年間1000万台規模でLinuxを搭載するようになった(関連記事)。

 Linuxはオープンソース・ソフトウエアなので,各機器に搭載されたソースコードは,誰でもダウンロードできるようにしているメーカーが多い。以下がダウンロード・ページの例だ(メーカーによっては,製品のシリアルナンバーを入力する必要がある場合もある)。

 こうしてみるとあらためて様々な機器にLinuxが搭載されていることに驚く。例えばソニーの場合は製品ジャンル別に整理され検索できるようになっているが,電子ブック・リーダー,ビデオ・レコーダー,Blu-rayプレイヤー,デジタルカメラやビデオカメラ,本当に様々な分野で利用されている。

 試しに実際にダウンロードしてみる。ソニーのページから,デジタルハイビジョン液晶テレビ BRAVIAのソースをたどってカーネルをダウンロードしてみた。tgzで圧縮されている。展開し,どのような点がカスタマイズされているのかgrep検索を手がかりに調べてみたりと,なかなか楽しい。

 それにしても,こうして実際の機器に使用されているソースコードを,競合他社の技術者も読み,使用できるというのは考えてみればすごいことだ。家電向けLinuxのコミュニティであるCE Linuxフォーラムは,そのホワイトペーパー(関連記事)でソースコードを公開するメリットを「他社と共同開発できるので開発コストを低減でき,開発期間を短縮できるだけでなく,世界的なソフトウエアの開発への参加は世界最高水準の技術者を育てる」と指摘しているが,実物のソースコードを目の当りにするとその言葉が実感を持って迫ってくる。

 と同時に気付くのは,ほとんどの機器のカーネルはまだ2.4であることだ。最新のカーネルは現在2.6で,サーバーやデスクトップ向けのLinuxは2年以上前に2.4に移行している。前述したCE Linuxフォーラムのホワイトペーパー(関連記事)は「もしここで組込みシステム開発者のLinux開発の進化への参画が低調になるような状況に陥ると,あっという間に進化から取り残されてしまう」と,Linuxのメリットが大きく損なわれる恐れがあると警告,組込みの本場である日本の果たすべき役割は大きいと指摘している。

 そのために,技術者がなるべく自由にオープンソース・ソフトウエアの開発に参加できるようにすべき,とCE Linuxフォーラムは経営者に向けて提言している。技術が漏洩することを心配するかもしれないが,GPLである以上製品化すればソースコードを公開しなければならない。であれば開発段階で公開することで,他の開発者と共同開発できるメリットが生まれる。CE Linuxフォーラムでは「もしも社内のソフトウエア技術者がオープンソース・コミュニティ活動に参加して開発を進めたいと申し出てきたら是非許してあげてください」と呼びかけている。

◎関連資料
コミュニティー型開発スタイルによる組込みソフトウエア開発革新(CE Linux Forum)
Linux カーネル開発のやり方 : kernel-2.6 付属 HOWTO の日本語訳(Linux JF Project)