風変わりな言葉を勝手に作るのはいかがなものかと思いつつ、“Excelレガシー”という言葉を、日経コンピュータの若手記者と議論して作ってみた。企業の業務部門が表計算ソフトExcelとその関数やマクロを使って自ら開発し、利用を続けてきた業務アプリケーションのことである。

 レガシーとは遺産のことだが、IT(情報技術)の世界ではあまりいい意味で使われない。通常はメインフレーム上に残っている古いアプリケーション資産を指す。Excelレガシーはメインフレームではなく、パソコン上に残っているアプリケーションだが、悪い状況であるという点はまったく同じである。

 すなわち、年々改良を重ねたため、アプリケーションが肥大化・老朽化している。その上、開発を担当した業務担当者が異動や退職でいなくなってしまい、アプリケーションがブラックボックスとなり、保守ができない。メインフレームにおける、以上の問題をひっくるめて、筆者は「情報システムの西暦2007年問題」と命名したが、Excelレガシーにおいても同様の2007年問題が存在する。

 パソコン・ソフトの話だから大した問題ではない、ということにはならない。Excelアプリケーションと、メインフレーム上の基幹アプリケーションを比べると、重要度において大差があるわけではない。メインフレーム上のアプリケーションは主として定型処理を、Excelアプリケーションは主として非定型処理を、それぞれ担っているという違いがあるだけである。いずれも基幹の業務を処理するために無くてはならないアプリケーションになっている。

 しかもここへ来て、いわゆる内部統制に注目が集まり、ブラックボックスのExcelレガシーは問題視されている。実際、「間違ったExcelシートを顧客に提出してしまい、会社に実害を与えた」「Excelのマクロに誤りがあり、間違った計算結果を長年出していた」といった話を聞くことがある。

 Excelレガシーを生み出した原因は、Excelの高機能性にある。現場の業務部門は、Excelを利用して次々にアプリケーションを作ってしまい、定型業務を処理するアプリケーションと格闘していた情報システム部門はこれを黙認してきた。

 情報システム部門は今後、Excelとそのアプリケーションを、管理対象にしなければならないが、それは簡単なことではない。そこで情報システム部門の方々に参考になるような特集記事を、日経コンピュータ誌に掲載しようと思い立った。7月9日号において、Excelレガシー問題とその対策をまとめる予定である。

 この問題は、現場のITプロフェッショナルの方々の知見がないと解くことはできない。ITpro読者の皆様で、Excelレガシー問題についてご意見をお持ちの方は、ぜひコメント投稿の仕組みを使ってご意見を書き込んでいただきたい。よろしくお願いします。