今回は「IP」(internet protocol)を取り上げる。IPは,最も重要なネットワーク技術と言っても,言い過ぎではないだろう。

 Webや電子メールといったアプリケーションの通信が成り立っているのは,IPのおかげである。日常的に耳にするほど,名前自体はなじみがあるはずだ。しかし,ネットワーク技術としてみると,カバーする範囲はとても広く,つかみどころがないと感じられるかもしれない。

 そこで今回は,IPを体系立てて,解説していこう。まずIPの全体像をしっかりと把握し,そのうえでIPのキーとなる要素をきちんと押さえるような構成にした。読み進めれば,まったくの初心者でも,IPがどういうものか理解できるはずだ。

全体像と個別の3テーマで理解

 この特集3は,Lesson1~4の4部構成で,IPを学んでいく。

 Lesson1では,まずIPの全体像を眺める。「そもそもIPって何?」, 「IPの利用目的は?」,「どんな装置やしくみで成り立っているの?」といった基本的な疑問に答えていく。IPについて具体的なイメージを持ってもらえるようにした。ここだけでも読めば,ネットワーク技術に詳しくない人に「IPとはこういうものなんだよ」と自信を持って話せるようになるだろう。

 続くLesson2~4では,もう少し深くIPのしくみを学ぶ。IPを理解するうえで重要なテーマを三つ選び,それぞれに焦点を当てる。

 Lesson2では,IPでデータを運ぶ単位である「IPパケット」を見ていく。IPパケットには,運ばれるデータだけではなく,パケットを正しく相手に届けるために必要な情報がいくつも盛り込まれている。それらの情報を調べてみれば,IPパケットが届けられるしくみがわかる。

 Lesson3は,「IPアドレス」を取り上げる。IPアドレスはIPパケットを届ける相手を特定するための情報である。IPのしくみのカギと言えるだろう。IPアドレスの正体は32ビット長あるいは1 2 8ビット長のビット列だが,それは無味乾燥な数字の羅列ではなく,きちんと決められた構造を持っている。さらに,IPアドレスにはいくつかのタイプがあり,通信の仕方によって使い分けている。そうしたIPアドレスの持つ意味をしっかり把握すれば,IPネットワークの構造や,IPの通信方式について理解を深められるに違いない。

 Lesson4は「ルーティング」がテーマである。IPパケットは,複雑に枝分かれしたネットワークの上を,ルーターによって転送されて目的地まで届く。その一連の転送処理がルーティングである。ここではルーティングの基本的なしくみを理解することが目的だ。

 修了テストでは,Lesson1~4の内容の理解度をチェックする。中には,難しく思える問題があるかもしれない。しかし,問題文や図の中にヒントがあるので,よく考えながらチャレンジしよう。最後のまとめは,修了テストの解答にもなっている。答え合わせしながら,復習に役立ててほしい。