Forrester Research, Inc.
Sucharita Mulpuru Senior Analyst
Carrie A. Johnson Vice President, Research Director
Peter Hult Senior Research Associate


 2006年のオンライン販売業界を振り返ると,電子商取引における顧客転換率(Web来訪者が実際に顧客になる確率)の停滞を何とかしようという動きが大きな話題になった。「グーグルチェックアウト」のように,決済や購買プロセスには目覚ましい開発があった一方,ほかの分野の改善は停滞気味で電子決済責任者の関心を集めなかった。

 2007年の業界を展望すると,オンライン販売業者はそろそろ新しい成長エンジンを考える時期に来ている。フォレスターとしては,以下のようないくつかの予想をしてみた。

 まず,Webサイトの運用手法が大いに注目を集める。ゴメスやキーノートシステム,ティーリーフ・テクノロジーが提供するようなWebサイトのパフォーマンス監視機能だ。これらは,大規模なサイト向けに使われていたが,2007年には一般化する。ダウンロード時間やWebサイトの可用性といった判断基準があると,小規模な電子商取引事業者も自社のWebサイトの不具合に気が付くようになる。そのサービス料金は1カ月500ドルなど手の届きやすい水準になってきているため,小さな小売業者でもベンチマークを測ることができる。

 次に,新たな決済手段が増え続けるだろうということ。2006年に様々な選択肢が登場し,衰える気配がなかった。従来のクレジットカードやデビットカードだけでなく,ビル・ミー・レイターやグーグルチェックアウト,ペイパルなどがあり,消費者にとっては支払い手法が柔軟になっている。また,小売業者にとっても,マスターカードやビザといったカード会社に高い手数料を支払うことがなくなる。新興業者のほうが手数料が安いのだ。

 第三に,「製品発見(discovery)」が新しいバズワード(流行語)になる。消費者は,膨大な検索結果の中から,期待どおりの製品を絞り込んでくれる方法を求めている。プロントなど一部の企業は実現しつつあるが,ほかの企業は個人が求める結果が得られるように試行錯誤を続けている。プロントの関連会社であるギフト・ドット・コムは,専門性の高い店員によって贈り物を絞り込んでいる。最近,ショッピング・ドット・コムに技術供与したザフは,いくつかの質問のやりとりを通じて顧客に適切な提案をするツールを提供している。

リアルの店舗とネットの店舗が融合

 これまでは,既存の流通チャネルへの配慮が,メーカー直販モデルの抑止力になっていた。しかし,最近になってアップルの直販モデルの成功例が知れわたるようになり,既存の流通チャネルとの融合ソリューションが登場したことと合わせ,メーカーが直販モデルを採用しやすくなっている。例えば,キャロウェイゴルフは,Webサイトで注文を集めて,流通業者の1社に配送を任せている。

 「ロングテール」の重要性もますます高まっている。小規模の電子商取引サイトの売り上げは,全体のおよそ1/4を占める。もともとの低コスト構造と検索エンジンによる最適化手法によって,こうしたサイトの数は相当規模に膨らんでいるのだ。特定分野の小さいサイトを集めることによって,断片的なマーケティング情報を結合して大きなマージンを得ている企業も登場し始めた。例えばネットショップスとニッチ・リテールが,こうしたモデルを実行している。

 オンライン・ショッピングにおける消費者の声も一段と大きくなるだろう。いわゆるWeb2.0といわれるツールを活用することで,ほかの消費者が作成したコンテンツが別の消費者の満足度を上げるというサイクルが生まれ,今後数年にわたって話題を集めることになる。バイ・ドットコムは,同社の映像センターに対して製品の推薦映像の投稿を認めており,スレッドレスやメトロパークといった若者向けアパレル企業は,消費者の声をTシャツなどの製品企画に反映している。