日経NETWORKでは先日,「企業ネットワークの構成に関するアンケート」と題する調査を実施した。その名の通りに,各ユーザー企業がどのようなネットワーク構成になっているのかを,実際の現場の担当者に答えてもらうというものだ。おかげさまで,ITproの読者を含め多くの回答が集まったのだが,その中で筆者が面白いと思ったのがWANの部分だ。

 ここでいうWANとは,複数の拠点の間を結ぶネットワークのこと。企業がある程度大きくなると,本社以外に営業所など複数の拠点があるのが当たり前。それらの間をどうやって結んでいるかということを調べるために,WAN接続に利用している通信サービスは何かを聞いてみたのだ。

 拠点間の接続には,昔から使われてきた専用線に加えて,最近ではインターネットをはじめとするIPネットワーク使った安いサービスを利用することが増えている。代表的なのがVPN(virtual private network)と呼ばれる仮想専用線サービスで,特にIP-VPNとインターネットVPNの二つが広く使われている。IP-VPNとは,通信事業者が管理しているIPネットワーク上で,自分のためのVPNを作ってもらうというもの。一方,インターネットVPNは,パケットをIPsecで暗号化することで,みんなで使っているインターネット上にVPNを構築するというものである。IP-VPNのほうが管理や運用を通信事業者に任せられるため楽だが,インターネットVPNのほうが利用していくためのコストが安い。

 こうした特徴の違いから,会社の規模が大きくなって拠点間の通信量が大きければ大きいほどIP-VPN,それほど拠点間の通信量が大きくなければインターネットVPNを使っているのではないか。調査前には,単純にそう思っていた。ところが,その考えを裏切る意外な結果が出たのだ。

 規模の大きなネットワークでは,確かに予想通りIP-VPNの利用が最も多かった。そして,中規模になると今度はインターネットVPNのほうが利用者は多くなる。ここまでは予想通りと言える。だが,意外だったのは小規模のネットワークの結果である。この傾向でいくと,小規模ネットワークではインターネットVPNの圧勝かと思えたが,何とIP-VPNが巻き返し,インターネットVPNとほぼ同数のユーザーが利用していたのだ。

 そこで,改めて回答を調べてみたところ,どうも小規模になると運用が簡単なことが大きなポイントとなるという姿が見えてきた。小規模になると,ネットワークの管理や運用をする専門の人も少なくなるので,どうもインターネットVPNを利用するためにルーターをいちいち設定・管理するのが難しくなる(あるいは面倒になる)ようなのだ。このため,多少の値段の差なら,簡単に利用できるIP-VPNを選ぶ人が増えてきたのだ。

 このように,「通信量が多くない小規模ネットワークでは,IP-VPNよりもインターネットVPNのほうが圧倒的だろう」という筆者の“常識”は間違いだったことがわかった。これは,単純に思い込んでいた筆者の見識不足だが,同様の思い込みが多くの人にあるのではないだろうか。

 今回の調査結果はITpro上で「徹底分析 最新企業ネットワーク」として,まとめて紹介することにした。もしかすると,読者の皆さんの“常識”にも,筆者と同じように間違っている部分があるかもしれない。調査結果を見て,確認していただければ幸いである。