Webブラウザ内でWindowsなどのOSと同等のデスクトップ環境を実現するサービスが、相次いで登場している。Ajaxの手法を使い、マウスで動かせるウインドウやアイコンがあり、テキスト・エディタなどを利用できる。急速に進化を続けるWebの世界を象徴するサービスだ。

 2006年8月時点で、公開されているサービスは、「StartForce」、「YouOS」、「FlyakiteOSX」、「eyeOS」など。いずれもここ1~2カ月の間に、米国のベンチャー企業などが相次いで公開した。

 どのサービスも、WindowsやMac OSといった既存のOSに似たGUIを備える()。StartForceはWindowsの「エクスプローラ」のようなファイル管理ツールやコマンド・プロンプト、ファイルを消去する「ゴミ箱」、そして「スタート」メニューを備えている。FlyakiteOSXはアイコンのデザインや、よく使うアプリケーションを即座に起動する「ランチャー」までMac OS Xとよく似ている。

図●「StartForce」の画面例
図●「StartForce」の画面例
ブラウザの中にWindowsデスクトップと同様の環境を実現している。マウスでウインドウをドラッグしたり、ダブルクリックでファイルやフォルダを開いたりできる

 「ブラウザOS」と呼ばれ始めたこれらのサービスの正体は、Ajax(Asynchronous Javascript and XML)の手法を取り入れて開発したプログラムである。ブラウザOSを公開しているWebサイトにログインすると、プログラムがダウンロードされて、ユーザーのパソコン上のWebブラウザで実行される。

 現在のところ、ほとんどのブラウザOSは試験サービスか、またはオープンソースだ。そのなかにあって唯一、実ビジネスを想定しているのが StartForceである。開発元である米スタートフォースは、登録ユーザーがブラウザOSを無料で使えるようにするかわりに、StartForceで動くアプリケーションを有料で提供する。スタートフォースはアプリケーション開発ベンダーから収入の一部を得る。

 現在利用できるアプリケーションはまだ少ないが、品ぞろえを増やすために、06年8月4日からアプリケーション開発用のAPIを公開した。同社はホスティング会社のフュージョン・ネットワークサービスと提携して、06年内にも日本での正式サービスを開始するとみられる。

 スタートフォースのチャン・ジン・コウCEO(最高経営責任者)は、「デスクトップOSのリッチな使い勝手をWebブラウザに取り入れる。Ajaxによって、どのパソコンからでも、同じ環境、同じデータを利用できるようになる」と話す。Ajaxを使いブラウザ上で直接動くオフィス・ソフトも登場しているが、ブラウザごとの動作検証などの手間がかかる。ブラウザOSを利用すればこの手間が省ける。

 まだブラウザOSには、実行速度や同時に起動できるアプリケーション数など改善点も残るが、AjaxによってWebアプリケーションが急激に進化していることを考えると、今後も注目すべきなのは間違いない。