丸紅でCIOを務める朝田照男・代表取締役専務執行役員
[画像のクリックで拡大表示]

 バブル崩壊後の「冬の時代」を乗り越え、総合商社が元気を取り戻している。2007年3月期決算で、1000億円を超える過去最高の純利益をたたきだした丸紅もその1つだ。ダイエーへの資本参加に続き、発電や建設事業などでも「攻め」の投融資を展開する。

 「こうした積極的な投融資を支えるのがERP」とCIOを務める朝田照男・代表取締役専務執行役員は話す。1999年に独SAPのERP「R/3」を導入し、2003年には主要なグループ企業を包含するインフラ「MAIN-21」の構築を完了した。決算処理の迅速化、グループ企業の経営状況把握など、ERPを導入したメリットは大きいが、なかでも「リスク・マネジメントの強化は企業の持続的な成長を追い求めるうえで欠かせないもの」と言う。

 投融資の判断において、リスクに見合ったリターンを将来的に稼ぎ出せるのかどうかを見極めるため、MAIN-21の中で案件の固定資産や営業権、与信などの詳細データを分析し、それに基づいてリスク量を測っている。「リスク管理を徹底するからこそ、攻めの投資にも踏み切れる」

 MAIN-21のさらなる活用分野として、朝田専務が視野に入れているのが資金調達だ。「従来は事業会社や海外法人など約550社のグループ企業が個別に金融機関からの借り入れを行っていたのを、2006年から順次、本社での一括調達に切り替えてきた。これに伴って、MAIN-21で各社の資金計画や資金繰りなどを統合的に把握できる体制を今後2~3年かけて構築する予定」と話す。経理・財務担当役員も務める朝田専務ならではの視点を生かし、ITの徹底活用に挑む。

Profile of CIO

◆経営トップとのコミュニケーションで大事にしていること
・ 「総合商社として今自社に足りないものは何か」「お客様との次のビジネスには何が必要か」といった視点で新しいシステムのコンセプトなどについて話すことが多い。権限委譲が進んでいるので、個別のシステムの開発状況やコストなどについて、トップから詳細な指示を受けることはあまりない。

 勝俣宣夫社長とは1日1回は話している。これは勝俣社長自身が心がけていることで、各営業部門の部門長などとも毎日会話し、各部門が何をしようかと把握しようとしている。こうした会話には朝早い時間が適しているので、朝早く出社し、本来の就業時間の前に情報交換を済ませている。

◆ITベンダーに対して強く要望したいこと、IT業界への不満など
 まず第一は納期の管理。もう1つは我々の仕事の内容を十分に理解してほしいということ。どんなに優れたソフトでも、商社の場合、カスタマイズしないと適用できない。各事業におけるビジネスモデルを十分に理解した上で、システム開発に取り組んでいただきたい。

◆普段読んでいる新聞・雑誌
・日本経済新聞と朝日新聞。雑誌は日経ビジネス。

◆最近読んだ本
・幸田真音の『周極星』(中央公論新社)。中国における金融ビジネスというのを小説風に理解して面白い。今後の日本を考えるときに1つのヒントになるのが野村総合研究所の『2010年日本の経営―ビジョナリー・エクセレンスへの地図』(東洋経済新報社)。ジェフリー・アーチャーやフレデリック・フォーサイスも全部読んでいる。最近は週末も忙しく、読書量が減っているのが残念。

◆仕事に役立つお勧めのインターネットサイト
日経ネットブルームバーグのサイト

◆ストレス解消法
・週末のジム通い。10年以上続けている。

※朝田氏の正式な肩書きは「代表取締役専務執行役員、CIO、情報企画部・経理部・財務部・IR担当役員、情報産業部門管掌役員」です