「大型トラックの環境負荷は、乗用車に比べて平均約60倍」という。大型トラックの場合、走行距離は乗用車の約20倍。廃車になるまで100万kmを超えることも珍しくない。それから、乗用車の約3倍の燃料を使う。したがって、大型トラックは乗用車よりも20×3=60倍の環境負荷をかけている、となる。

 とはいえ、トラックは我々の生活に不可欠な輸送手段である。日本国内の物流の90%以上をトラックが担っている。トラックなしでは、生活、社会が成り立たなくなる。

 このように生活に不可欠でありながら、環境面からは劣等生であるトラックを“矯正”しようとするサービスがある。いすゞ自動車とKDDIが共同開発した「みまもりくんオンラインサービス」である。5月31日にバージョンアップを図り、同日発売した。

 旧バージョンのサービスは、2004年2月から提供しており、これまで約1万2000台が契約し,「燃費が向上した」「事故が減少した」などの評価を受けている。燃費が約20%向上したという例も珍しくないという。

 このサービスは,KDDIの移動通信モジュールを組み込んだデジタル式運行記録計(デジタコ:写真1)をトラックに搭載し、センターなどと情報をやりとりすることで運行状況をリアルタイムで管理する。そのなかで省燃費運転や安全運転を徹底したり、運送業務の効率化を図ったりできる。

写真1●KDDIの移動通信モジュールを組み込んだデジタル式運行記録計(デジタコ)   写真1●KDDIの移動通信モジュールを組み込んだデジタル式運行記録計(デジタコ)

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 燃費向上には大きな二つの仕掛けがある。一つは、デジタコに組み込まれているECODRIVEメーター。そのときどきの省燃費運転の度合いを10段階で表示する。もう一つが「省エネ運転レポートサービス」。運転操作状況や車両状況をグラフや点数で詳細に把握でき、これをもとに省燃費や安全運行に役立てる(写真2)。特にいすゞIT対応車の場合、車両を制御するコンピュータから直接データを取り込んでいるため、詳細なデータを収集、分析できるという。

写真2●運転操作状況や車両状況をグラフや点数で表示する省エネ運転レポート
写真2●運転操作状況や車両状況をグラフや点数で表示する省エネ運転レポート

 また「スピードを出し過ぎですよ」「休憩を取りましょう」「事故多発地点ですよ」などと音声で知らせることで安全運転を図る。

 このような内容を評価され、みまもりくんオンラインサービスは、これまで「MCPC award 2007 グランプリ(大賞)/総務大臣賞」「第二回エコプロダクツ大賞国土交通大臣賞(エコサービス部門)」を受賞している。

 初期導入価格が7万9980円/台で,月額利用料が945円/台。燃料費を削減できることや運行状況のリアルタイム管理が容易に実現できることなどを考えれば導入しやすいだろう。

 すべてのトラックがCO2を20%削減すれば、国内全体排出量の0.7%削減になるという。さらに乗用車も含めて全車両が20%削減すれば同4%削減になる計算。有料道路の料金所の渋滞緩和ということでETCを推進するよりも、みまもりくんのような取り組みを支援していくことが先決だと思うのだが。