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失敗しないSaaS導入の心得

日経コミュニケーション

第1回 企業に広がるオンデマンド型サービス

2007/06/11
小野 亮=日経コミュニケーション
出典:日経コミュニケーション 2007年5月15日号  34ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

「自前でシステムを構築するのではなく,オンデマンド型のサービスを使おう」。このような決断を下す企業が増えている(表1)。日本でも既にいくつもの企業・組織が導入。数千〜数万アカウントという規模で利用する例も出てきた。

表1●オンデマンド型サービスを導入している国内ユーザー企業の例(一部は導入予定)
表1●オンデマンド型サービスを導入している国内ユーザー企業の例(一部は導入予定)

 ナレッジ・マネージメント製品を開発・販売するリアルコムは2007年3月,従来利用していたWebグループウエアに代えて,独自ドメイン名でWebメールを運用できるグーグルの「Google Apps Premier Edition」を利用し始めた。主な用途は「Googleカレンダー」によるグループ・スケジューラである。日米,そして中国の拠点で共同利用する。

 日本大学も同様にGoogle Appsを採用。7学部の約3万人の学生に電子メールの「Gmail」,IM(インスタント・メッセージ)サービスの「Googleトーク」,そしてGoogleカレンダーの機能を提供する。今後は全学部の約10万人に広げる予定である。

 業務システムでも,オンデマンド型サービス採用の動きが活発化している。例えばビジネススクールを展開するグロービスは2006年11月から,給与計算などの人事システムに,ラクラスのサービス「Lacrasio」を使っている。

 また,三菱UFJ信託銀行と日本郵政公社は2007年4月,それぞれ,セールスフォース・ドットコムの顧客管理(CRM)のオンデマンド型サービス「Salesforce」の採用を決めた。日本郵政公社の場合は,2007年10月に分社化して発足する郵便局の,全国13局の営業部門と約4200局のマーケティング部門を中心に約5200人の職員が利用する予定である。

 サービス・プロバイダも手応えを感じている。日本のセールスフォースのユーザー企業は1000社を超えた。顧客管理の「Siebel CRM On Demand」を提供する日本オラクルは,「サービス開始から半年で,50社以上のユーザーがついた」(日本オラクルインフォメーションシステムズの市東慎太郎営業本部本部長)という。

SaaS登場でオンデマンド型サービスに活気

 ここで言うオンデマンド型サービスとは,インターネットを介してサービス・プロバイダが運用する情報システムを利用するもの(図1)。SaaS(software as a service)とも呼ばれる。

図1●ネットワークを介してサービスを提供する「オンデマンド型サービス」
図1●ネットワークを介してサービスを提供する「オンデマンド型サービス」
同様のシステムを自社内に構築する場合に比べて, 「運用の負担が少ない」,「導入までの期間が短い」,「導入コストが低い」などのメリットがある。
[画像のクリックで拡大表示]

 オンデマンド型サービス,SaaSと言うと難しく聞こえるかも知れないが,要するに,自前ではサーバーを持たないまま,必要に応じて利用できるオンライン・サービスである。1990年代後半から登場したASP型サービスと基本的な使い方は同じである。大容量のファイルを転送できるエルネットの「宅ふぁいる便」,インターネット接続事業者(プロバイダ)などが提供するメール・サーバーのホスティングといったサービスは,多くのユーザーが利用した経験があるだろう。前述のユーザー企業が採用したのは,同じイメージでグループウエアや業務アプリケーションを利用できるサービスである。

 実際のところ,SaaSは「シングル・インスタンスマルチテナントのもの」「ユーザーによるカスタマイズが可能なもの」「サービス・プロバイダが自ら開発して提供するもの」など,いくつかの観点で従来のASP型サービスとは区別される場合が多い(図2)。ただ,ユーザーの立場から見れば,必要に応じて(オンデマンドで),月々の利用料を支払って使うサービスであることには変わりはない。

図2●SaaSの特徴
図2●SaaSの特徴
SaaSは,「マルチテナント」「カスタマイズ」「プロバイダ自らが開発」「システム連携」のうちいくつかの特徴を備えたもの。

運用・保守の手間を省きたい

 こうしたサービスの特徴は,システムの運用・保守をサービス・プロバイダに委託できることにある。ユーザーは自前でシステムを用意せずに済む上,セキュリティ・パッチやバージョンアップといった作業を自ら実施する必要はない。基本的に稼働中のシステムを使うため,システム導入の時間もあまりかからない。システム投資を伴わないため,導入コストも低い。

 実際のところ,見込んでいるメリットはユーザーごとに異なる。例えばリアルコムの場合は,運用・保守にかかる手間を省くことが目的だった。同社の従業員数は約70人。ソフト開発を手掛ける同社にとって,エンジニア・リソースは貴重だ。「システムをきっちり運用できるだけのスキルを持つ人材なら,むしろ開発業務を担当させたい」(松本崇志マーケティングデベロップメントグループプリンシパル)。こう考えてSaaS採用に踏み切った。

みずほはすぐ使える点を評価

 2005年10月に設立されたみずほプライベートウェルスマネジメントの場合は,短期間で導入できる点と拡張性を評価してSalesforceを採用した。同社はみずほフィナンシャルグループで富裕層顧客に向けて金融商品の販売・コンサルティングを手掛ける企業である。

 業務を始める上では顧客がどんな商品を購入したかといった顧客管理は欠かせない。ところが,「国内では珍しい業態のプライベート・ウェルス・マネージメントの立ち上げには,ビジネスモデルを作り上げるだけで多大な時間を要した」(導入を支援したみずほ情報総研の竹内浩昭事業企画部参事役)。情報システムについて考えられるようになったのは,設立予定を3カ月後に控えた2005年夏だった。

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