SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を社内情報共有に活用する企業が増えている。従来のグループウエアでは難しかった、組織を越えた社員間の情報共有が自然にできることを評価した。市場の盛り上がりに、社内向けSNS構築ソフトも相次いで登場している。

 『東京ウォーカー』など30近い情報誌やWebサイトを手掛ける角川クロスメディアは2006年12月に、約400人の社員が参加する社内SNSを開始した。各雑誌やWebメディアを担当する部署間で情報を共有するのが目的だ。

 会社の規模が大きくなれば、社内にどんな人材がいるのか把握するのも難しくなる。04年から企業向けSNSの構築を手掛けるBeat Communicationの村井亮社長は、「SNSで社内の風通しを良くして、自然に情報を共有できるようにしたいと考える企業が増えている」と話す。

 すでに、NTT東日本、日本興亜損害保険、予備校「早稲田塾」を運営するサマデイなどがSNSを導入済みだ。「06年のSNS導入企業は、05年と比較して5倍程度に増えそうだ」(Beatの村井社長)。同社は100社超の企業にSNSを導入したという。

 SNSは、会員からの招待により初めて利用できるコミュニティ型の情報共有サービス。日々の記録である「ブログ」に加え、趣味や仕事のテーマなどによるコミュニティの作成、各社員の人脈情報の管理、アクセス履歴などの機能を備える。

 SNSを顧客向けのマーケティングに活用する企業は、これまでもあったが、既存のグループウエアを補完する第二の情報共有手段として導入する企業が、ここにきて増えている。

 これらの企業は、情報共有手段としてブログとSNSを検討することが多い。このときに、より機能の豊富なSNSを選ぶことが多いようだ。

 企業のニーズの高まりを受け、企業向けSNS構築ソフト、サービスが増えている()。老舗のBeat以外に、富士通ソフトウェアテクノロジーズ(FST)や、NTTPCコミュニケーションズが製品、サービスの提供を始めた。「OpenPNE」というオープンソースのSNS構築ソフトも登場している。

表●主な企業向けのSNS構築ソフト、サービス
表●主な企業向けのSNS構築ソフト、サービス  [画像のクリックで拡大表示]

 FSTによると、「同じ社内とはいっても、顧客名を出せない製品開発やシステム開発プロジェクトもある。特定のメンバーだけ参加できるというSNSへの要望は強い」(第一アプリケーションコンポーネント統括部 第一開発部の影山裕子氏)。

 06年11月末にマイクロソフトが発売した「2007 Office system」も、SNSの要素を盛り込んだ製品だ。情報共有基盤「SharePoint Server 2007」は、社員の情報や、組織構成、同僚や知り合いなどの情報を盛り込み、社員同士で横のつながりを作れるようにした。

 Office 2007で新たに加わったピア・ツー・ピア型グループウエア「Groove 2007」も「必要なメンバーだけで閉じたコミュニティを作って共同作業をするのに適したツール。SNSとして使うことができる」(同社インフォメーションワーカービジネス本部の松田誠シニアプロダクトマネージャ)という。

 これまでSNSは一般消費者向けのコミュニティという側面が注目されがちだったが、今後は企業内の新しい情報共有手段の一つとして浸透していきそうだ。