プロジェクトプランの作成にあたっては,プロジェクトの目的と最終成果物を明確にし,必要な作業項目を洗い出す必要がある。次に,スケジュール・予算・リスクを検討し,検討結果をプロジェクトプランに盛り込んでまとめていく。プロジェクトのリスクについては,リスクを特定したあとで,各リスクの影響度合いと起こる確率を定量化する。影響が大きいリスクが発生した場合の対策についてもプロジェクトプランに盛り込む。
引き続き,プロジェクトプランの作成について考えていく。前回述べたように,プロジェクトプランは四つの段階を経て作成する。(1)プロジェクトの目的・最終成果物の検討・明確化,(2)WBS(Work Breakdown Structure)によるプロジェクト分解,(3)スケジュール・予算・リスクの検討や作成,(4)プロジェクトプランとしてまとめる,である。WBSとは,プロジェクトの最終成果物を作り出すために必要となるすべてのプロジェクト活動を抽出し,作業内容を記述したものだ。
今回は,(3)スケジュール・予算・リスクなどの検討や作成,(4)プロジェクトプランとしてまとめる,の二点について説明する。プロジェクトのWBSを作成し終わったら,具体的に何をどのようにしたらよいのかを検討し,決めていく。必ず検討すべきは,スケジュール,予算,リスクの3点である。
スケジュールを作成する
スケジュールの作成にあたっては,マイルストーン・スケジュール,プロジェクトサマリー・スケジュール,プロジェクトマスター・スケジュールの三つを組み合わせることが多い。
マイルストーンとは,プロジェクトの主要な管理ポイントを指す。マイルストーン・スケジュールは,マイルストーンを時間軸上に表示したものである(図1)。プロジェクトの契約日,開始日,終了予定日,設計完了日,テスト開始日などの主要なポイントを記載する。
図1●マイルストーン・スケジュールの例 |
マイルストーン・スケジュールを作ることで,プロジェクトの最終納期だけでなく,プロジェクト途中のチェックポイントをクリヤーするようにプロジェクト活動をコントロールしやすくなる。マイルストーンを明確にしておかないと,プロジェクトの最後になってあわてることになる。
プロジェクトサマリー・スケジュールは,プロジェクトで実施する主要な項目を時間軸上で記載したもの(図2)。プロジェクト活動としてどのようなものがあり,いつ開始して,いつ終了すればよいのかが分かる。このスケジュールは,プロジェクト関係者に対する説明やプロジェクト全体の進ちょく状況を確認するために使用する。ただし,詳細な作業項目や作業間の関連付けなどは分かりにくい。
図2●プロジェクトサマリー・スケジュールの例 |
プロジェクトマスター・スケジュールは,プロジェクト全体をどのようにして進めていくかを示す総合スケジュール表である(図3)。このスケジュール表を見れば,何をいつまでに実施したらよいのか,この作業はどの作業と関係があるのかが分かる。
図3●プロジェクトマスター・スケジュールの例 |
マスター・スケジュールは,プロジェクトを実際にコントロールするために使用する重要なものである。それだけにプロジェクトの状況に応じて適時,修正する必要がある。にもかかわらず,修正を怠るケースをよく見かける。プロジェクト関係者が集まり,最初こそ詳細なスケジュールを作成する。だが,プロジェクトの進行実績に応じた修正をだれも行なわなくなる。そのうちにスケジュールの信頼性がなくなり,プロジェクト関係者は最終納期だけを頼りにして作業を進めるはめに陥る。
このような事態を防ぐ一つの手段として,進ちょく管理機能があるプロジェクトマネジメント・ツールを使用するとよい。スケジュールをツールに登録していくときに,作業項目としてWBSの項目を利用する。WBSをさらに分解してより詳細な作業項目をツールに登録する場合もある。
以上3種類のスケジュールの整合性には注意する。例えば,顧客から指定されたマイルストーンがある場合,サマリー・スケジュールやマスター・スケジュールは,そのマイルストーンを守るように作ることになる。