スマートフォンの通信速度は対応する通信方式によってある程度決まってくる。今回取り上げた4機種は,利用する通信方式が異なる点をまず押さえておく必要がある。

 イー・モバイルのEM・ONEはW-CDMA方式を拡張した「HSDPA」(関連記事)という方式に対応している。規格上の最大速度は約14Mビット/秒だが,EM・ONEは下り方向の最大速度を3.6Mビット/秒,上り方向を384kビット/秒としている。

 ソフトバンクモバイルのX01HTもEM・ONEと同様にHSDPA方式。端末の処理能力により,下り方向の最大速度は1.8Mビット/秒。上り方向はEM・ONEと同様,384kビット/秒だ。NTTドコモのhTc ZはW-CDMAだけに対応。下り方向の最大速度は384kビット/秒で,上り方向は64kビット/秒である。

 ウィルコムのW-ZERO3[es]は,「W-OAM」に対応。ウィルコムのサービスは通信速度が上り下りで対称であるため,上り下りともに最大204kビット/秒になる(関連記事)。

 こうした規格上で示す通信速度はあくまで目安であって,実際にその通りの通信速度は出ない。これら通信事業者のサービスはどれも実際の通信速度を保証しない「ベストエフォート」で提供しているからだ。

 そこで,スマートフォンは実際にどのくらいの速度を出せるのかを東京都内の3カ所で実測した。具体的にはビジネスパーソンが多い新宿駅西口,東京駅丸の内口,東京ミッドタウンの3カ所である(図1)。測定は2007年4月中旬,平日の昼,夜の二つの時間帯で実施した。

図1●スマートフォン4機種の通信速度を測定した場所
図1●スマートフォン4機種の通信速度を測定した場所
新宿駅西口,東京駅丸の内口,六本木の東京ミッドタウンの3カ所で測定した。
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 通信速度の計測は1MバイトのPDFファイル,1MバイトのテキストのみのWordファイルについて,日経BP社内に立てたFTPサーバーとの間でダウンロード,アップロードの両方の速度を計測。時間帯による通信速度の揺らぎを考慮し,昼夜で下りと上りを各3回ずつ計測し平均速度を算出した。FTPサーバーに利用したマシンはCPUがPentium M 1.2GHz,メモリーは512Mバイト。FTPサーバー側の回線はNTT東日本のBフレッツである。

EM・ONEとX01HTが数百キロで通信

 結果は,HSDPAに対応したEM・ONEとX01HTの2機種が高速だった(図2)。EM・ONEは平均して下り方向が約484kビット/秒,上り方向が約276kビット/秒を出している。X01HTはEM・ONEには及ばなかったものの,下り方向で約405kビット/秒,上り方向で約213kビット/秒だった。両機種ともにHSDPA方式の優位性を明確に示したと言える。

図2●Windows Mobile搭載4機種の計測結果
図2●Windows Mobile搭載4機種の計測結果  [画像のクリックで拡大表示]

 残りのhTc ZとW-ZERO3[es]は携帯とPHSといった違いはあるものの,結果は五十歩百歩だった。下り方向の通信速度はhTc Zが約71kビット/秒,W-ZERO3[es]が約70kビット/秒,上り方向はhTc Zが約60kビット/秒,W-ZERO3[es]が約77kビット/秒だ。

 記録した下り方向の最高速度と最低速度も紹介しておこう。最高速度はEM・ONEが520.7kビット/秒,X01HTが470.5kビット/秒,hTc Zが116.2kビット/秒,W-ZERO3[es]が89.2kビット/秒だった。一方,最低速度はEM・ONEが428.6kビット/秒,X01HTが207.0kビット/秒,hTc Zが22.3kビット/秒,W-ZERO3[es]が40.9kビット/秒である。

 結果から分かるとおり,NTTドコモのhTc Zには速度で大きな揺れが目立つ。契約者数が最も多い同社だけに,こうした通信実験で影響を受けやすいのかもしれない。

<参考URL>
NTTドコモの法人向けWebサイト
KDDI(携帯電話サービス)の法人向けWebサイト
ソフトバンクモバイルの法人向けWebサイト
ウィルコムの法人向けWebサイト
電気通信事業者協会(TCA)の携帯電話/PHS契約数サイト

第1回 高速通信を武器に動き出すスマートフォン
第2回 Windows Mobile搭載機,HSDPA採用の2機種に軍配
第3回 通信速度と異なる体感,PDF閲覧は機種ごとに差
第4回 解像度と輝度ならEM・ONE,HTC製は片手操作でも快適
第5回 最新モバイル通信カードの速度測定,イー・モバイルは2メガ超も