米Dellが法人向けノートPC「Latitude」シリーズで,ソリッド・ステート・ディスク(SSD,半導体ディスク)を採用した。SSDは今まさに主要なストレージ技術になろうとしている。SSDは高価で専門的な技術だと言われてきたが,消費者向けだけでなく,ビジネス・ユーザー向けのパソコンにも採用されることになった。今後は,多目的のコンピュータ・ユーザーにとって,今よりも人気があり,安価なものになるかもしれない。

 SSDデバイスとは,RAMをユーザーのコンピュータのハード・ディスク・インターフェースに直接接続できるように,物理RAMをパッケージしたものだ。これまでSSDの使用は,標準的なハード・ディスクよりも高価ということを許容してでも,SSDに駆動部分がないことや,(回転型ディスク・ドライブと比べて)アクセス速度が速いといった利点を享受したい,極めて限定的なユーザーに限られていた。しかし最近になって,多くのハードウエア・ベンダーがSSDドライブを採用し始めた。ちなみに,米国の主要なパソコン・メーカーとして初めてSSDデバイス搭載モデルを出荷したのはDellで,発表は2007年4月下旬だった(訳注:日本ではソニーが先行している)。

 DellはLatitudeの2つのモデルで,米SanDisk製の32GバイトSSDドライブを採用している。これら2つのモデルは,それぞれ別のユーザー・マーケット・セグメントを対象にしている。

1つは軍需を意識したモデル

 1つ目のモデルは,「Latitude 620 ATG」だ。ATGは「All Terrain Grade(オール・テレイン・グレード)」の頭字語で,米国国防省の軍需品採用基準「MIL-STD 810F」の認証を取得したノートブック・ラインにDellがつけた名前である(一般的には「ruggedized(高耐久性)」ノートブックと呼ばれている)。DellのATGモデルは, 対ショック性を備えたドライブやLCDパネルを備え,屋外や,オフィスのように清潔でない環境におけるノートブックの使いやすさを高める,他の多くの機能を提供する。Latitude 620 ATGには対ショック性を備えたディスクが標準装備されているが,SSDデバイスに切り替えることでノートブックの信頼性を一段階上に高められる。

 しかし,SSDにはかなり高価な値札もついてくる。SSDを追加することで,標準のハード・ドライブを搭載したノートブックよりも600ドル高価になる上,記憶容量は標準のドライブよりも50Gバイト少なくなるのである。だがこれでも,SSDデバイスの価格は大幅に下がっているのだ。DellがLatitudeノートブックでSSDを提供し始める前,SSDの価格はサイズや目的によって,1500~1万ドルもしていたのだ。

もう1つはウルトラ・モバイル

 携帯用コンピュータの分野でLatitude 620 ATGの対極に位置する,携帯性に極めて優れた「Latitude D420」ノートブックでも,Dellは全く同じSSDデバイスを提供している。この環境でも,標準のハード・ドライブを上回るSSDの信頼性は有益である。だが最初にユーザーの関心を引くのは,恐らくSSDが実現する高速なブートとアプリケーションの起動だろう。これら2つの基本性能は,ユーザーが超小型ノートブックに求めるものだ。Latitude D420にSSDを追加すると,標準の30Gバイト・ハード・ドライブを搭載した場合よりも550ドル高価になる。

 SSDの使用時,コンピュータはSSDをハード・ディスクとして認識する。SSDを機能させるのに,特別なデバイスは必要ないのだ。これによって,機能面で問題が発生する可能性を回避している。

 非常に高速なディスク・ストレージを必要としているユーザーは,SSDに喜んで高いお金を払うだろう。それによって,より多くのコンピュータにSSDデバイスが採用される道が開けるはずだ。これから継続的にメモリー・チップのコストが低下し,生産能力が向上するにつれて,SSDの価格は下がり続けるだろう。SSDのコストが回転式メディアと同じくらいになることは恐らくないだろうが,より高性能のSSDデバイスが,近いうちにもっと安価で利用できるようになるはずだ。それによって,高可用性・高パフォーマンスのサーバー市場でも,SSDがより幅広く使われるようになるだろう。