筆者はこれまで,Windows Server 2008(開発コード名:Longhorn)を高く評価する記事を書いてきた。この新しいWindows Serverは,ロール・ベースのインストールと管理に対応し,画期的な新機能や強化されたセキュリティを搭載しており,これまでのどのMicrosoftサーバー製品よりも速いペースで導入が進むだろうと予測している。しかし,仮想化機能からは主要な機能が3つ抜け落ちてしまった。

 Microsoftは5月のWinHEC 2007で,Longhornに関する変更点を説明した。すなわち,Microsoftがこれまで数年間にわたって宣伝してきたハイパーバイザベースの仮想化ソリューションが,まだうわさの段階ではあるが,Windows Server 2008の出荷後180日以内に出荷されるというのだ。ここで1つだけ問題がある。出荷される仮想化ソリューションには,3つの中核機能が欠けているのだ。

 Microsoftには,「Windows Server 2003 R2」において,ネットワーク・アクセス保護(NAP)などの重要な新機能や様々な端末サービスの機能強化を削除して,製品の出荷スケジュールを守ったという「前科」がある。Windows Server 2008の仮想化機能,「Windows Server Virtualization」から削られる機能も,それとよく似ている。もし前向きに評価できる点があるとすれば,それはWindows Server部門の人々にスケジュール意識が染みついているということだけだ。もし,機能が削られることで製品の品質が上がるのであれば,多少は評価できるかもしれない。

 しかし,大きな問題がある。今回削られた機能は,人々が最も待ち望んでいた機能なのだ。削られた機能は,(1)ライブ・マイグレーション機能(稼働中の仮想サーバーを移行する機能),(2)ストレージやネットワーキング・ハードウエア,メモリ,プロセッサのホット・スワップ機能,(3)最大32個のプロセッサコアのサポート機能--である。

 Windows Server Virtualizationは,現在のところ,最大16個のプロセッサコアしかサポートしない。このように重要な機能が削られた上に,Microsoftが今度リリースする仮想化管理ソフトウエア「System Center Virtual Machine Manager 2007」が,Windows Server 2008のユーザーに無料でライセンスされないという「ニュース」を聞かされたら,誰でも強烈なショックを受けるだろう。Windows Server Virtualizationは突然,当初予想されていたほど魅力的な製品でも,豊富な機能を持った製品でもなくなってしまったのだ。

 これはもちろん,米EMCの傘下にあるVMwareにとっては大きなチャンスだ。また,VMwareの多くのユーザーにとっては,彼らのテクノロジへの投資が当分の間は無駄にはならないことを示す兆候でもある。

 Microsoftによるハイパーバイザベースの仮想化ソリューションのリリースを心待ちにしている人々や,Microsoft製ハイパーバイザーが出荷されるまで既存の「Virtual Server」をつなぎに使おうと考えている人々にとっては,今月飛び込んできたこの最悪のニュースは,その選択を考え直す理由としては十分である。

 問題は単純だ。Windows Server Virtualizationが2008年に出荷されたとしても,その製品には,VMwareが現在販売している「ESX Server」に搭載済みの多くの重要な機能が欠落しているのだ。ただし,MicrosoftはWindows Server Virtualizationで,ESX Serverよりも広範囲にわたるドライバをサポートしようとしている。この取り組みがESX Serverより優れたソリューションを生む可能性も無いわけではない。

 もしその優位性が明白でない場合は,ここで簡単に答えを出すことはできない。結局のところ,それが今回の発表に関する最大の問題なのだ。これで,仮想化テクノロジに関して何か決めようとしても,簡単には決断できなくなってしまった。