IP電話機は停電に弱い。電源につないで使うか,PoE機能付きのLANスイッチから電力供給を受ける必要があるからだ。できれば,拠点停電時の対策も取っておくとよい。

一部だけでも使えるようにする

 PoE機能付きのLANスイッチを使えば,従来の内線電話機と同等の停電対策ができそうな気がするが,完全な対策は難しい。複数のフロアにまたがるようなオフィスでは,フロアごとの配線盤(IDF)の近くにLANスイッチを設置するのが一般的。こうしたLANスイッチまでバックアップ電源を確保するケースはほとんどない。停電すればパソコンは止まるので,LANスイッチだけ動かしても意味がないからだ。IP電話機のためにIDFのスイッチをPoE対応にして,すべてに無停電電源装置(UPS)などのバックアップ電源を用意するとなると,膨大な費用がかかる。

 現実的な対策は,「重要な電話機だけをバックアップ電源に接続したPoE対応LANスイッチに収容する」(伊藤忠テクノソリューションズ ネットワーク&セキュリティ技術部の青山 真己IPコミュニケーション技術課長)方法だ(図5-1)。電源供給を続けるLANスイッチだけを別立てにすれば,必要なUPSを減らせる。IP電話機を部署に1台といったように置いておけば,着信があったときも不通になることはない。

図5-1●重要な電話機だけは停電しても使えるようにする
図5-1●重要な電話機だけは停電しても使えるようにする
従来の電話と違いIP電話は末端まで電源が必要。すべての電話機を使えるようにするのは難しいが,重要な電話機だけ使えるようにするのなら何とかなる。
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バグ発生を想定し対処を早める

 IP電話で怖いのは,バグが原因のトラブルだ。「基本機能のバグはほとんどなくなったが,新機能に関連するバグが見つかることはある」(NECの秋田部長)。

 バグに完全に対処するのは難しい。それでも,起こりやすい状況を知っておけば,IP電話の停止の可能性を減らしたり,復旧を早くしたりできる。

事前のテストで発見

 バグは,新機能を追加したときや,負荷が高くなったとき,ネットワークが不安定なときに顕在化しやすい(図5-2)。特に通話が増えると,負荷が上がるとともに例外的な処理が増加する。例外的な処理にはバグが潜んでいることが多い。また,ネットワークが不安定になると,大量のIP電話機がSIPサーバーの登録から外れたり再登録したりということを繰り返す。SIPサーバーにとって一斉に端末を登録する処理は負荷が高い。処理が手いっぱいになり,IP電話がまともに使えなくなったりする。

図5-2●バグによるトラブルが生じやすい状況と対策
図5-2●バグによるトラブルが生じやすい状況と対策
新機能を追加したり負荷が増えるとバグが発生しやすい。事前テストや早めの増設である程度回避できる。
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 バグ対策に決定的なものはない。ただ,新機能を追加するときに事前テストを入念にしたり,負荷を定期的に監視してタイミングよく性能を増強すれば,事前に見つけたり被害に至るのを避けたりできる可能性がある。ネットワークを安定して使えるように,バックアップ回線を用意しておくのも有効だ。

 また,バグが発生したときの手順をあらかじめ決めておけば,停止時間は最小に留められる。動作状況を確認して,サーバーをリセットしたりベンダーに対応を手配したりするといったことだ。